算数好きのお父さんにあえてススメしたい「国語の学習」
近ごろ、中学受験に熱心なお父さんが増えています。中学受験における親の役割は、子どもの健康管理や精神面のフォローだったり、毎日の学習のスケジュール管理であったりと多岐にわたりますが、多くのお父さん達がやりたがるのが、勉強を教えること。特に自分が得意だった算数を教えたがるお父さんが多いように感じます。
しかし、中学受験経験者ならまだしも、そうでないお父さんが受験算数を教えるのは注意が必要です。なぜなら、中学受験の算数では特殊な解法が求められるため、それを知らないお父さんが自己流で教えようとすると、うまくいかなくなるからです。
それよりも私がオススメしたいのは、国語の学習に関わることです。「国語なんて日本語なのだからわざわざ教える必要なんてないじゃないか」「算数なら教えられるけれど、国語は苦手だったからなぁ」と思うお父さんもいるでしょう。ですが安心してください。国語を「教える」のではなく、「学習に関わる」ことなら、十分に戦力になってあげられるのです。
一般的に中学受験の国語入試は、大問1~3で構成されています。大問1は物語文、大問2は説明文または論説文といった説明的文章、大問3は漢字と語句です。物語なら読み取れるけれど、論説文は全然分からないというお子さん。その逆で、説明的文章は好きではないけれど得点は取れる、でも物語はさっぱりというお子さん。また、文章問題はできたりできなかったりだけれど、そもそも漢字と語句の知識が少なすぎて基礎得点が取れてないお子さんなど、国語が苦手なお子さんにも理由はさまざまです。
ただ1つの傾向として、算数は得意だけれど国語は点が取れないという子ども達が苦手とするのが、物語文の読解です。
そして「算数なら教えてやれるけれど……」というお父さん方も、国語への苦手意識のおおよそは物語文や随筆の読解にあるようです。
難関中の国語入試は「気持ちを想像」することすら難しい
小学校の教科書に出てくる物語文といえば、同じ年頃の子どもを主人公にしたストーリーが多いものです。そのため、友達にこういうことを言われたら嫌だったとか、もしお母さんと離ればなれに暮らすことになったら寂しいなとか、自分の立場と重ねて考えたり、想像したりすることができる内容であれば、理解や共感することができます。
ところが、中学受験の国語入試では、小学生の子ども達が知らない時代の物語や、主人公が小学生の子どもではなく大人だったり、男子校の国語の入試問題に同じ年ごろの女の子の気持ちを聞いてくるということが非常に多いのです。もともと難関中学ではそのような傾向がありましたが、近年はさらにその傾向が強まってきているように感じています。
例えば、2019年度の聖光学院の国語入試では、飼えなくなった老犬を預かって世話をする「老犬ホーム」で働き始めた新卒の女の子が主人公の物語が登場しました。仕事ではお客様は大事だけれど、犬のことを大切に思わない飼い主の行いが許せない。そんな女性社員の心の葛藤を描いた物語をわずか12歳の男の子に読ませ、その心情を問うているのです。