2022年12月3日(土)

WEDGE REPORT

2019年6月18日

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樫山幸夫 (かしやま・ゆきお)

元産經新聞論説委員長

元産經新聞論説委員長。政治部で中曽根首相番、竹下幹事長番、霞クラブ(外務省)詰め、ワシントン特派員、同支局長、外信部次長、編集局次長、正論調査室長兼論説委員、産経新聞社監査役を歴任。2度のワシントン勤務時代は、ホワイトハウス、国務省などを担当、米国の内政、外交など幅広く取材した。

仲介、イランの協力要請受けて

 今回の首相の〝仲介〟はもともと、イラン側の協力要請を受けてのことだった。

 米・イランの軍事的緊張が高まる中で、イランのザリフ外相が5月下旬、急きょ来日、首相、河野外相と会談した。同月末にトランプ米大統領が国賓として東京を訪問する直前のタイミングを狙い、トランプ氏と個人的にも親しい首相に対し、イランの考え方を大統領に伝えるよう要請するのが目的だった。

 安倍首相はこれをうけて、首脳会談で伝えられた大統領の意向をイラン側に説明、直接対話へ前向きな対応を促すために、国会開会中の合間を縫ってイランを訪問した。

 イランとしては、日本に仲介など要請した覚えはないというかもしれないが、ザリフ外相来日に応えて仲介の労を取ろうとした首相に対するのだから、ハメネイ師にしても、もう少しモノのいいようがあったろう。首相がテヘランを発つか発たないかというタイミングで、あのように強硬なメッセージを出すくらいなら、最初から日本の努力に期待などすべきではなかった。

支持した大統領が「時期尚早」とは

 トランプ大統領の発言にもびっくりした。

 大統領は6月14日、帰国した安倍首相が電話で、ハメネイ師らとの会談内容を説明した際、一応は謝意を表し、労をねぎらったようだ。ところが大統領はその前日のツイッターで、「個人的には取引を考慮することすら早すぎると思っている。かれらは準備ができていないし、われわれもそうだ」と述べ、イランとの接触は時期尚早だと強調した。早すぎるというなら、なぜ安倍首相にイラン訪問など要請したのか。

 米国の真意を疑わせるもうひとつの事実は、米財務省が6月12日、イランにあらたな制裁を科したこと。イラン革命防衛隊の精鋭組織「コッズ部隊」に関連する企業1社と2個人を対象に、武器密売に関与したとして米国との取引停止、米国内の資産を凍結した。安倍首相がテヘランに到着、これから先方との会談を行うというタイミングでの制裁発動は、仲介をぶち壊す意図ではないかとすら勘繰りたくなる。

 首相のイラン訪問をめぐっては、産経、朝日はトランプ大統領も積極的に要請したと伝えたが、読売は、大統領から支持を得られるがどうか日本政府が懸念していたと報じた。メディアの見方が分かれたが、トランプ氏は実のところ、安倍訪問を快く思ってはいなかったのか。 

 当サイトで、筆者はさきに、米国は本音では日本イランの関係強化を望んでいないのかもしれないという疑念に言及した(『34年前の仲介、相手にされず』、6月10日アップ)。この懸念が現実になったとしたら、安倍首相はまさにピエロを演じたわけで、気の毒というほかはない。

 事実、首相の訪問については、一部海外メディアで、辛口の論評がなされている。ハメネイ師を支持するイランのケイハン紙は「日本が仲介したいのなら、訪米して核合意の維持を求めるべきだ」と論じ、英BBCは「参院選に向けた有権者へのアピール」と冷淡な分析を披歴している。

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