2024年4月23日(火)

Wedge REPORT

2019年7月28日

「技能工昇進モデルプラン」

 2の「2013年に設計した「技能工昇進モデルプラン」」とは、新卒(通常18歳)で入社し、60歳の定年まで勤務した場合のキャリア・パスを資格取得や目標年収を交え、説明したものだ。

 一部を次に挙げる。「18歳 鈴木職業訓練校」(約250∼280万円)、「19歳 技能者として現場配属」(280∼350万円)、「25歳位から 課長・サブ職長として現場管理・技術指導」(400∼500万円)、「35歳 中間管理職(課長・次長)職長として安全管理・工程管理・マネージメントなどすべての業務を行える」(600∼750万円)、「40歳 管理職(部長)」「45歳 営業・会社経営にも携わり、多数の現場を統括し、職長教育を受け持つ」(700∼950万円)

 高野取締役によると、上記のいずれもすでに実現しているという。訓練校を卒業し、現在在籍する35歳以上全員が600万円を超えている。進路指導の教職員が最も関心を持つのがこのモデルプランだという。

 東京都の職業教育「デュアルシステム」にも登録した。そのほか、全国(都内近郊が中心)の高校から、実習やインターンシップの依頼を受けた場合、可能な限り、協力をしている。

 東京都教育庁都立学校教育部によると、デュアルシステムとは「学校と企業が一緒になって生徒を育成する新しい職業教育」と位置付けられている。インターンシップよりも長い期間の就業訓練を行い、企業が必要とする実践的な技能・技術を身につける。企業と生徒の合意があれば、卒業後に就業訓練を行った企業に就職することもできる。東京都によると現在、都立の田無工業高校や墨田工業高校などの生徒が、自らが希望する職業訓練を受けているようだ。田無工業からは毎年、生徒が鈴木組に来て、新卒として入社した。このうちの1人は高校2年、3年と連続で参加していた。

 「弊社の訓練校でとび職などの仕事の様子を見て、聞いて、体験してもらえる。高校ではなかなか学べない実技を経験できる。入社希望の場合、双方の合意があれば採用試験を受けて入社することも可能だ。保護者も納得しやすいと思う。その生徒が入社すると、後輩もデュアルシステムを受けようとなる。好循環が生まれやすい」

 実習やインターンシップの依頼は、工業高校のほか、普通科高校や農業高校などからも受ける機会が増えてきた。依頼の内容を検討したうえで、中堅やベテランの職長などを派遣し、教えている。

 鈴木社長は取材の最後に、こう締めくくった。

「建設業界の中小企業、しかも、とび職などの現場に生徒や我が子を送り出すのは、学校や保護者からすると、戸惑いや迷いが依然としてあるかのかもしれない。それでも、25年前に高卒の新卒採用を始めた頃に比べれば、その抵抗感は弱くなっていると私は思う。これからも、とび職などのイメージを変えるために、新卒採用に積極的に取り組んでいきたい」

株式会社鈴木組
東京都文京区千駄木3-43-3 ATK千駄木ビル4階
http://www.suzujts.co.jp//index.html

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