2024年11月22日(金)

海野素央の Democracy, Unity And Human Rights

2019年7月30日

12万人対2万人

 次に、トランプ大統領のツイッターの信頼性に関するエピソードを紹介しましょう。

 トランプ大統領は6月18日、フロリダ州オーランドにある全米プロバスケットボール協会のチーム「オーランド・マジック」のアリーナ「アムウエイ・センター」に、支持者を集めて再選出馬表明を行いました。

3階席には空席が目立った(海野撮影@米フロリダ州オーランド「アムウエイ・センター」)

 当初、「集会に10万人の応募があった」と、自身のツイッターに投稿しました。その後、「12万人の応募があった」とつぶやいています。仮にこの数字が正確であるならば、収容人数2万人のアリーナに、12万人のトランプ支持者が押し寄せたことになります。

 ところが筆者が会場で観察すると、驚いたことに3階席に空席があったのです。参加者は約1万9000人ぐらいでしょう。

 本当に12万人の応募があれば、空席はできなかったはずです。トランプ大統領は席がないので、集会に参加しないように支持者に促したと説明しましたが、「12万人」は信憑性が欠けるとみられても当然でしょう。

コノリー下院議員との会話

 トランプ大統領の話題になったイラン攻撃「10分前中止」のツイッターについても考えてみます。

 トランプ大統領は米軍無人偵察機がイラン軍によって撃墜されると、一旦は同国への報復攻撃を命じましたが、直前になって撤回しました。「10分前に中止した」と6月21日、自身のツイッターで明かしました。イランに対して、常に攻撃を仕掛けることができるというメッセージを発信したといえるかもしれません。

 しかし筆者はこの「10分前」も、うえで説明した「12万人」と同様、支持者をハラハラドキドキさせ、臨場感をもたせるための単なる演出の1つだったとみています。

 トランプ大統領が自身のツイッターにイラン攻撃「10分前中止」の投稿をした日、筆者は米下院外交委員会中東・南アジア小委員会及びアジア・太平洋小委員会に所属するジェリー・コノリー議員(民主党・南部バージニア州第11選挙区選出)に、同議員のワシントン事務所で面会をしていました。

 コノリー議員は冒頭、トランプ大統領の「10分前中止」に関して感想を求めてきました。そこで筆者は、「トランプ大統領は優柔不断(indecisive)で、臆病者(coward)です」と伝えました。

 というのは、米西部コロラド州コロラドスプリングス在住のIT企業のCEO(最高経営責任者)ジョン・ストリート氏が語った言葉が頭から離れなかったからです。ストリート氏は、中道穏健派の共和党支持者で反トランプです。

 前で触れたロイター通信とイプソスによる共同世論調査によると、トランプ大統領の共和党内の支持率は81%で、不支持率は17%です。60代の白人男性のストリート氏は、17%に含まれています。

 訪日したとき、ストリート氏は「経済が好調でも、品格のない人物に米国の代表になってもらいたくないです。トランプは小心者です」と語りました。当時、筆者にはトランプ大統領は小心者に見えませんでした。

 話を戻しましょう。コノリー議員は右手を口元に当てて直視し、筆者のコメントを傾聴するとこう述べました。

 「私と見方が似ています。トランプは弱い人間です」

 読者の皆さんから見ると、トランプ大統領は「強い指導者」かもしれません。ただその見方は、同大統領の暴言を含んだ言語及び表情やジェスチャーといった非言語コミュニケーションによるところが大きいでしょう。


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