2024年11月22日(金)

Wedge REPORT

2019年8月26日

今回の準優勝ですべてが帳消しになるとは思っていない

 もちろん、一方的な疑いをかけられてしまった習志野側の怒りは今も完全に沈静化したとは言えない。実際に今大会で習志野の関係者に話を聞いてみると、その中には未だ星稜・林監督に対して「あれだけ大々的に疑惑をぶち上げられれば、証拠が示されなくてもこっちが悪者になってしまう。

 2カ月の謹慎をしたからといって、それで『分かりました』と納得できるような話ではないですよ。すべて非を認めて『間違いでした』と、こちらに謝罪してくれれば考えなくもないですが」と激高する人も実際にいたほどだ。とはいえ、林監督も相手の習志野の怒りが収まっていない中での指揮官復帰、そして夏の甲子園出場という逆境の流れになっていたことは百も承知だったであろう。

 星稜の有力OBの1人は、こう言って林監督をかばった。

 「林監督は、すべての批判を受ける覚悟を持ちながらグラウンドに帰って来た。そして彼は見事にチームを決勝にまで引っ張り、準優勝の快挙を成し遂げた。県大会が終わってからも調子を崩したままだった奥川の起用法も注目される中で相当に難しかったはずだが、きっちりと本来の姿に戻させただけでなく過去最高のパフォーマンスを出させたのは特筆すべきこと。素直に評価して然るべきではないでしょうか。

 センバツの〝不祥事〟に関しては、今回の準優勝ですべてが帳消しになるとは彼も思っていないでしょう。きっと生涯ずっと背負い続けていくつもりなのだと思います。習志野さんとの〝わだかまり〟も準優勝した今のタイミングでは嫌味になってしまうから自重しているのだと思いますが、少し時間を置いてから何らかの形で直接謝罪するタイミングももしかして模索しているのかもしれません。林監督はそういう愚直な人間ですから」

 準Vの栄誉をつかんでもイバラの道を歩む覚悟の星稜・林監督。決勝翌日の一夜明け取材の場では、偉大な先輩の松井氏から「(謹慎の)2カ月間、野球を離れて、彼も自問自答し、新たな出発をしてここまで来られたことは、素晴らしいですし、大きな財産になったと思います」とメッセージを送られたことについて振られると、次のように述べた。

 「松井さんらしい温かいメッセージで報われた」

 それまでどことなく仏頂面気味だった林監督が、この時ばかりは珍しく少しだけ白い歯をのぞかせた。間違いなく心の底からの嘘偽りない本音であったからだろう。

  
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