2024年4月16日(火)

前向きに読み解く経済の裏側

2019年9月24日

兄弟姉妹の相続には高税率を

 筆者が特に主張しているのは、子も親も配偶者もいない被相続人の遺産は兄弟姉妹が相続するので、これに高い相続税率を課す、ということです。100%でも良いと思います。

 兄弟姉妹が相続できるのは「棚から牡丹餅」的な状況が多いでしょうし、被相続人としても、どうしても兄弟姉妹に相続させたいと考えている人は少ないでしょうから、高い税率でも文句は出にくいでしょう。

 公平の観点からも、子がいない高齢者が受け取っていた年金は、他人の子たちが払った年金保険料を原資にしているわけですから、生きている間に使わなかった分くらいは後の世代のために国に返すのが公平でしょう。

 実際問題としても、これは重要です。結婚しない人や、子供のいない夫婦が増えていますから、数十年待つと、莫大な相続税が国庫に入ることが期待されるからです。

 問題があるとすれば、政治家には裕福な人が多いので、相続税の増税に賛成する人が少なそうだ、ということくらいでしょう。

固定資産税の増税は一石三鳥

 相続税と並んで筆者が増税すべきだと考えているのは、固定資産税です。これには、一石三鳥の効果が見込めるからです。第一は、増税による財政再建です。あるいは消費税を減税するのであれば、その際の代替財源にしても良いでしょう。

 第二は、東京一極集中の是正あるいは抑制です。東京都心にビジネスが集中すると、長距離通勤の無駄が生じるばかりか、災害時の帰宅難民の増加をもたらします。

 東日本大震災の時に都内で発生した人の流れは、事故が起きなかったのが不思議なほどです。幹線道路沿いで火災が発生していたら、大混乱になっていたかも知れません。そして、次の災害の時には、実際にそうなるかも知れないわけです。

 問題を解決あるいは緩和するためには、東京都心で働く人を減らす事が重要です。そのためには規制による方法と市場原理を活用する方法がありますが、望ましいのは後者でしょう。

 たとえば「都内のオフィスビルは建て替えに限る」といった規制をすれば、神奈川県の東京都沿い等に大きなビルが建つことになり、様々な利害得失やアンバランスが生じますし、線引きを巡って利権が生じるかもしれません。

 一方、固定資産税の増税であれば、線引きや利権や利害得失は生じません。「東京で営業する事に大きなメリットを感じている会社は残り、そうでもない会社は出て行く」「東京に魅力を感じる人や東京で大いに稼げる人は残り、そうでない人は出て行く」ということになるわけです。

 東京が増税で住みにくくなったことで、脱出する企業や人が増えるでしょうが、彼らがどこへ行くかは、各自治体の魅力によるでしょう。そこで、自治体が魅力を高める競争をして、東京脱出組の迎え入れ競争をするようになるでしょう。それが、地方創世につながれば、素晴らしいことですね。期待しましょう。

  
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