2024年11月23日(土)

海野素央の Democracy, Unity And Human Rights

2019年10月9日

「公然」の理由

 さらに、トランプ大統領はウクライナのみならず、中国に対してもバイデン親子に関する捜査をカメラの前で「公然」と要求しました。

 本来ならば、外国政府に対する選挙協力の要請は違法なので、公表しないはずです。それにも関わらず、トランプ大統領は「私は大統領として調査する義務がある」と堂々と述べて、強気の姿勢を崩していません。なぜでしょうか。

 2016年米大統領選挙においても、トランプ大統領はロシアにヒラリー・クリントン元国務長官の消えた3万3000通のメールを探すように呼びかけています。この呼びかけで、クリントン氏の「メール問題」はさらに注目を浴びました。

 今回もまったく同じ戦略を用いています。トランプ大統領は公然と外国政府に調査を要請すれば、メディアが大きく取り上げ、有権者の目が弾劾調査ではなく、バイデン親子の腐敗に向くと読んでいるのでしょう。これが「公然」の理由です。

やぶへび

 さて、バイデン副大統領(当時)は2013年12月、次男ハンター氏と一緒に中国を公式訪問しています。米メディアによれば、訪問の際中にハンター氏は、中国人の実業家ジョナサン・リ氏と会いました。その後、リ氏は投資ファンド会社「BHRパートナーズ」を設立し、ハンター氏は同社の取締役になりました。ちなみに、BHRパートナーズは中国銀行から支援を受けています。

 従って、ハンター氏が中国とのビジネスに関与していることは事実ですが、父親のバイデン氏が息子を助けるために、米中貿易問題で中国にとって有利な取引をしたという証拠はありません。

 今後、トランプ大統領がハンター氏をますます攻撃すれば、反トランプの有権者は同大統領の長女イヴァンカ氏と中国の関係を持ち出して反撃してくるでしょう。早くも、ある有権者が「どうしてイヴァンカは中国から商標登録を得たのか」と、トランプ大統領のツイートにリツイート(再ツイート)しました。

 米メディアによれば、イヴァンか氏が2017年4月に習主席夫妻と一緒にトランプ大統領の別荘「マール・ア・ラーゴ」で夕食をした当日、同氏の会社の商品登録が中国に仮承認されました。上の有権者は、この件に関して父親であるトランプ氏の力が影響を与えたといいたいのでしょう。

 ハンター氏への攻撃は、トランプ大統領にとって「やぶへび」になり、「イヴァンカ対ハンター」というもう一つの対立構図に発展しかねません。

  
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