海野素央の Love Trumps Hate

2019年10月9日

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海野素央 (うんの・もとお)

明治大学教授、心理学博士

明治大学政治経済学部教授。心理学博士。アメリカン大学(ワシントンDC)異文化マネジメント客員研究員(08~10年、12~13年)。専門は異文化間コミュニケーション論、異文化マネジメント論。08年及び12年の米大統領選挙においてオバマ陣営にボランティアの草の根運動員として参加。16年米大統領選挙ではクリントン陣営に入る。著書に「オバマ再選の内幕―オバマ陣営を支えた日本人が語る選挙戦略」(同友館)など多数。

見えてきたトランプの弾劾対策

 トランプ大統領はどのようにして民主党主導の弾劾調査を乗り切ろうとしているのでしょうか。これまでのトランプ大統領の言動を分析すると、対策が見えてきました。

 ホワイトハウス記者団に向かってトランプ大統領は、「私はバイデン陣営のことを気にかけていない。気にかけているのは、バイデン親子のとんでもない腐敗だ」と語気を強めて語り、大統領選挙ではなく「腐敗」を強調しました。この言葉を額面通りに信じることは、到底困難であると言わざるを得ません。

 まず、トランプ大統領が中国とバイデン親子の関係を争点にした背景には、反中国の感情を持つ支持者の関心を弾劾調査からそらせる思惑があることは間違いありません。

 トランプ大統領は「バイデンが中国と交渉したら、彼は中国にすべてを与えてしまう」と警告を発しています。これは明らかに、支持者にアピールしたものです。彼らが、米国の対中貿易赤字とバイデン親子の腐敗をリンクさせて考えるようになれば、トランプ大統領の狙い通りです。

「沼」にすり替えたトランプ

 次に、トランプ大統領は「沼(スワンプ)」と戦っているという演出をしています。以前説明しましたが、トランプ陣営及び支持者の間では、沼は「腐敗したエスタブリッシュメント(既存の支配層)」を指します。トランプ大統領はバイデン親子を沼に仕立てています。

 SNS上では、「(ワシントンの)沼はトランプ大統領を追い出そうとしている」「沼は彼(トランプ氏)を嫌っている」という内容の政治広告を流して、「トランプ対沼(バイデン親子)」という対立構図を鮮明にしています。

 加えて、今回のウクライナ疑惑を巡る弾劾調査は、腐敗したワシントンを変革しようして沼と戦っているトランプ大統領に対する民主党とメディアの「嫌がらせ」であるというメッセージも送信しています。

 ウクライナ疑惑では、トランプ大統領が民主党候補指名争いにおいて最有力候補であるバイデン氏に関する不利な情報を得るために、外国政府に圧力をかけて同氏とハンター氏に関する捜査を要求し協力を求めたのかに焦点が当たっています。

 ところが、トランプ大統領は議論の焦点を支持者から共感を得やすい「沼」にすり替えました。トランプ氏はこの点において実に優れた才能を有しています。

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