海野素央の Love Trumps Hate

2019年10月4日

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海野素央 (うんの・もとお)

明治大学教授、心理学博士

明治大学政治経済学部教授。心理学博士。アメリカン大学(ワシントンDC)異文化マネジメント客員研究員(08~10年、12~13年)。専門は異文化間コミュニケーション論、異文化マネジメント論。08年及び12年の米大統領選挙においてオバマ陣営にボランティアの草の根運動員として参加。16年米大統領選挙ではクリントン陣営に入る。著書に「オバマ再選の内幕―オバマ陣営を支えた日本人が語る選挙戦略」(同友館)など多数。

(REUTERS/AFLO)

 今回のテーマは「『ウクライナ疑惑』は誰に有利に働くのか?」です。米メディアは連日、ドナルド・トランプ大統領が権力を乱用してウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領に圧力をかけて、同国への軍事支援と引き換えに、2020年米大統領選挙への協力を要求した疑惑を報道しています。この「ウクライナ疑惑」を巡るトランプ弾劾調査にも米国民の関心が高まっています。

 そこで本稿では、ウクライナ疑惑がトランプ大統領、ナンシー・ペロシ下院議長、民主党大統領候補指名争いを戦っているジョー・バイデン前副大統領及びエリザべス・ウォーレン上院議員(東部マサチューセッツ州)に、どのような影響を与え、誰に最も有利に働くのかについて述べます。

「普通の政府」に戻りたい!

 トランプ大統領は、オバマ政権時代に対ウクライナ政策に関与したバイデン前副大統領が次男ハンター氏の汚職捜査をしていた検事総長を、同政府に圧力をかけて、解任させたと主張しています。さらに、ハンター氏はウクライナ及び中国から高額の報酬を得ていたと指摘し非難しています。 

 この件に関して米メディアは、バイデン親子に汚職の証拠はなかったと報じています。

 しかし、仮にバイデン氏が民主党候補に指名された場合、トランプ大統領はバイデン親子に「腐敗したエスタブリッシュメント(既存の支配者)」というレッテルを貼り、自分は彼らと戦っているという演出ができます。加えて、民主党下院が主導する弾劾調査を利用して支持基盤を固めることも可能です。

 すでにトランプ大統領は、ウクライナ疑惑と弾劾調査に関して「弾劾ではなくクーデター」「弾劾は内戦を招く」「内部告発者はスパイ」「民主党のでっち上げ」「大統領に対するハラスメント」「完全な魔女狩り」「メディアと民主党はパートナー」などと批判し、支持者に訴えています。

 仮に上院の弾劾裁判で民主党が大統領罷免に必要な3分の2の賛成票を獲得できなければ、トランプ大統領の勝利になります。同大統領は「ほらみたことか。私は無罪になった。嫌疑が晴れた」と主張するでしょう。大統領選挙に向けて「勢い」がつきます。

 以上はトランプ大統領にとってプラス要因ですが、マイナス要因も存在します。

 米国民には「普通の政権」に戻りたいという思いがあります。その願望を打ち砕くかのようにウクライナ疑惑が発覚しました。彼らは政権の混乱ぶりに疲れ果てています。病的な現象が見られる同政権に対する疲労(ファティーグ)がさらに増すことになります。これは再選を狙うトランプ大統領にとって、決してプラスには働かないでしょう。

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