外国人労働者の受け入れより日本人介護士の待遇改善
介護士が不足しているなら、外国人労働者を受け入れれば良い、ということで外国人の受け入れが始まりましたが、これはやめるべきです。
「介護が必要なのに受けられない人」にとっては朗報かもしれませんが、やりがい搾取されている介護士たちを、現状のまま放置することになるからです。
外国人介護士が日本人介護士より安い賃金で働くことがあれば大問題ですが、仮に同じ給料だとしても問題です。それは、「もしも外国人介護士が入って来なければ、政府は介護保険料を値上げして介護士の待遇を改善していたはず」だからです。
介護士たちは、外国人介護士というライバルの参入によって、賃金が上がるという期待を奪われ、やりがい搾取され続けることになるのです。それは是非避けたいと思います。
介護サービスの提供は政府の義務か
やりがい搾取の話から離れると、そもそも「現在の介護士の数で対応できる範囲内で介護をすれば良いのであって、介護サービスが過剰なのではないか」という意見もあるでしょう。
その場合、「介護士が足りないから、運の良い人は介護が受けられるが、運の悪い人は介護が受けられない」という事態は避けなければなりません。そのためのルール作りが必要です。
「要介護4と5だけは介護保険でカバーするけれども、それ以下の軽度な人については政府は介護せずに自助努力に任せれば良い」といった考え方もあるでしょう。あるいは、「入浴回数は病気にならない最低限度で良いだろう」という判断もあるでしょう。
介護保険料の値上げをして介護士の待遇を改善して介護士を大勢雇って十分な介護サービスを提供するべきか、介護保険料を値上げせずにできる範囲内での介護サービスの提供にとどめるべきか、それは主権者である国民が決めることですね。
ただ、要介護者が健康で文化的な最低限度の生活ができるように、最低必要な介護サービスを提供することは政府の義務ですから、そこは外せないはずです。介護士の待遇も、いずれにしても引き上げて、やりがい搾取はやめるべきです。あとは、介護離職が増加すると日本経済に悪影響が出かねない、といったことまで総合的に考えて、どう判断するのか、ということでしょうね。
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