私は3月に、『恐怖の環境テロリスト』(新潮新書)を刊行し、歪んだ環境テロの世界にどっぷりとはまった黒い活動家たちの思想基盤、実態、錬金術を解き明かした。
欧州では英国以外の諸国で昨今、環境テロリストたちによる放火や破壊工作、標的の母親の墓荒らしなど悪質な嫌がらせ事案が相次いでいる。イタリアでは、大規模な食肉加工システムに攻撃を加えるため、ファストフード店に放火する事件が頻発し、マクドナルド店事件ではその一部始終が動画でアップされた。彼らはネットを使って支援を訴え、賛同者の獲得を狙っている。
そんな中、欧州刑事警察機構(ユーロポール)は対策会議を開き、本格的なエコテロ対策に乗り出した。一方で、日本では、彼らの活動を遮る障害物はほとんどなく、オランダ人男性の騒動以降はむしろ多くの活動家が太地を訪れるようになり、反イルカ漁、反捕鯨の動きは勢力を増しているように思える。
環境テロリストの正体は、動植物に依存して生活を営む人間を「地球に寄生するウイルス」として、敵に見立てる環境原理主義者だ。動物の捕殺や自然破壊を絶対に許さない。SSよりもさらに過激な行動を取る彼らの息づかいは、SSキャンペーンの中にも随所にみられる。
自国豪州からも批判される「フォレスト」
1月上旬、オーストラリア沖で航行中の日本の調査捕鯨船団の監視船にオーストラリア国籍の男3人が乗り込んできた事件。実行犯は、豪西部の環境保護団体「フォレスト・レスキュー」の活動家たちだった。「フォレスト」はSSと密接なつながりを持ち、団体HPにはワトソン代表とメンバーの記念写真が掲載、事件を起こしたのも「シー・シェパードの活動を助けるため」と主張した。SSは高速ゴムボートを提供して、彼らの危険な洋上乗り込みを後方支援した。
結局、彼らは、日豪両政府の協議の末、艦船侵入罪などによる立件は免れたものの、帰国後、「(船内での食事は)こちらでなじみのすしバーで出されたようなものではなかった」などと食事の不満を訴え、さらに自らの行動を反省せずに「(救出費用の)請求書は日本政府に送るべきだ」と言いたい放題の限りをつくした。常識外れの言葉に、豪州の一般大衆からも「恥を知れ」との批判が渦巻いた。
洋上での彼らの救出劇には数千万円ほどの豪州の税金でまかなわれたという。日頃、日本の捕鯨を非難し、シー・シェパードを擁護するシドニー・モーニング・ヘラルド紙でさえも、「フォレスト」の行為を真っ向から否定する論調が見られた。
同紙のワシントン特派員のポール・シーハン記者がコラムを記し、「ワトソン集団やフォレストのメンバーたちは、聖人ぶって戦いを挑んでいるけれども、彼らは嘘や誇張表現を使っているに過ぎない」と痛烈に批判し、「彼ら自身が瀬戸際戦術の結果責任を受け入れるべき」と説いた。