海野素央の Love Trumps Hate

2019年10月25日

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海野素央 (うんの・もとお)

明治大学教授、心理学博士

明治大学政治経済学部教授。心理学博士。アメリカン大学(ワシントンDC)異文化マネジメント客員研究員(08~10年、12~13年)。専門は異文化間コミュニケーション論、異文化マネジメント論。08年及び12年の米大統領選挙においてオバマ陣営にボランティアの草の根運動員として参加。16年米大統領選挙ではクリントン陣営に入る。著書に「オバマ再選の内幕―オバマ陣営を支えた日本人が語る選挙戦略」(同友館)など多数。

なぜトランプはサーバーを探すのか?

 トランプ大統領は「(民主党全国委員会のコンピューター)サーバーはどこにあるんだ。サーバーをみたい」とホワイトハウス記者団に繰り返し語りました。サーバーがウクライナに隠されているというのです。では、なぜトランプ氏は民主党全国委員会のサーバーを探しているのでしょうか。

 2016年米大統領選挙において民主党はカリフォルニア州に拠点を置くサイバーセキュリティテクノロジー企業「クラウドストライク」に調査を依頼しました。クラウドストライクは、ロシアが民主党全国委員会のコンピューターに侵入し、大統領選挙に介入したと報告しています。米情報機関も前回の大統領選挙でロシアの干渉があったと断定しています。

 率直に言ってしまえば、トランプ大統領は上記の事実が気に入らないのです。周知の通り、16年米大統領選挙の期間中ロシアは、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)上で、ヒラリー・クリントン元国務長官に関する不利な情報を拡散しました。

 トランプ氏は前回の大統領選挙で勝利を収めましたが、米国民の中にはロシアの選挙介入によって勝ったかもしれないと考えている米国民がいます。つまり、合法的な勝利ではなかったと捉えている国民がいるのです。

 そこで、トランプ大統領はウクライナが民主党全国委員会と共謀して16年米大統領選挙に干渉したという「陰謀論」に固執しています。 選挙介入をしたのは実はロシアではなく、民主党と手を組んだウクライナであったということを是が非でも証明したい訳です。

 仮に証明できれば、様々なメリットが存在するからです。例えば、トランプ大統領が不正直なやり方で選挙に勝利したと信じている有権者の認識を変えることができます。ロシアの手助けなしに実力でクリントン氏を破ったと強調することも可能です。

 加えて、「2016年米大統領選挙の被害者はヒラリーではなく自分だ」と主張できます。「ロシアの選挙介入があったと断定した米情報機関の調査結果はでっちあげだ」とアピールすることもできます。「クラウドストライクの調査結果もフェイク(偽り)であり、民主党こそ腐敗している」という結論を下したいのでしょう。結局、来年の大統領選挙を有利な方向へ展開できるからです。トランプ氏はここまで狙っています。

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