海野素央の Love Trumps Hate

2019年10月17日

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海野素央 (うんの・もとお)

明治大学教授、心理学博士

明治大学政治経済学部教授。心理学博士。アメリカン大学(ワシントンDC)異文化マネジメント客員研究員(08~10年、12~13年)。専門は異文化間コミュニケーション論、異文化マネジメント論。08年及び12年の米大統領選挙においてオバマ陣営にボランティアの草の根運動員として参加。16年米大統領選挙ではクリントン陣営に入る。著書に「オバマ再選の内幕―オバマ陣営を支えた日本人が語る選挙戦略」(同友館)など多数。

 今回のテーマは「オバマのけつにキスをしたバイデン?」です。ドナルド・トランプ米大統領は野党民主党が弾劾調査に着手してから初の支持者集会を10日、中西部ミネソタ州ミネアポリスで開催しました。トランプ大統領の政敵ジョー・バイデン前大統領と次男ハンター氏に関する発言に注目が集まりました。そこで本稿では、同大統領のバイデン親子を痛烈に批判した演説を中心に述べます。

(REUTERS/AFLO)

隠された通話記録?

 トランプ大統領はウクライナ政府に圧力をかけてバイデン親子の汚職調査を要請した疑惑、いわゆる「ウクライナ疑惑」について集会で、同国のウォロディミル・ゼレンスキー大統領との通話記録を公開したと強調して、「透明性」をアピールしました。ゼレンスキー氏との会話は「快適で完璧な会話であった」と繰り返し述べ、圧力を8回かけてバイデン親子に関する汚職調査を要求しなかったと言い切りました。 

 それに対して、米メディアは30分間の電話会談の中で「トランプ大統領がゼレンスキー大統領に圧力を8回かけた」と報じていますが、通話記録の中にはその場面が記述されていません。

 そこで、公開された通話記録が完璧なものか否かを検証するために、筆者がゼレンスキー大統領、職場の米国人教員がトランプ大統領の役を演じながら記録を読んで、時間を計ってみました。結果は12分34秒でした。

 つまり公開された通話記録には、約17分30秒の会話内容が記録されていないということになります。その中に核心部分であるトランプ大統領のゼレンスキー大統領に対する8回にわたる圧力の場面が隠されているのかもしれません。いずれにしても透明性があるとは到底言えません。

集中攻撃と思考連鎖

 トランプ大統領はミネアポリスでの支持者を集めた集会で、バイデン親子を集中攻撃しました。演説の開始後、約24分が経過した時点で、「ハンター、ハンター」とハンター氏の名前を繰り返し呼びました。父親のバイデン氏がオバマ政権の副大統領のときに、「ハンターは中国から15億ドル(約1600億円)を受け取った」と主張しました。その上で、公の場に姿を現さないハンター氏に関して、「ハンターよ、出てこい」と印刷されたTシャツが欲しいと支持者に訴えました。

 結局トランプ大統領は約3分間に、なんと18回も「ハンター」と呼び、3回「15億ドル」に言及しました。その狙いは、どこにあるのでしょうか。

 率直に言ってしまえば、「バイデン → ハンター → 15億ドル」という思考の連鎖反応を狙ったものです。この否定的な思考連鎖の刷り込みに成功すれば、投票の際、バイデン前副大統領に不利に働くからです。

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