海野素央の Love Trumps Hate

2019年10月17日

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海野素央 (うんの・もとお)

明治大学教授、心理学博士

明治大学政治経済学部教授。心理学博士。アメリカン大学(ワシントンDC)異文化マネジメント客員研究員(08~10年、12~13年)。専門は異文化間コミュニケーション論、異文化マネジメント論。08年及び12年の米大統領選挙においてオバマ陣営にボランティアの草の根運動員として参加。16年米大統領選挙ではクリントン陣営に入る。著書に「オバマ再選の内幕―オバマ陣営を支えた日本人が語る選挙戦略」(同友館)など多数。

下品極まりないトランプの攻撃

 さらにトランプ大統領は集会で、支持者に向かって「バイデンはオバマのけつにキスをするやり方を理解している」と語気を強めて語りました。「バイデンはオバマのけつにキスをしてまで媚びへつらう」というメッセージを発信したのです。

 その瞬間、会場は爆笑の渦に巻かれました。トランプ氏の真後ろで、赤色のTシャツを着用して演説を聞いていた白人女性は一瞬、口を大きく開けて驚いた表情を浮かべ、その後(口を)両手で抑える様子がビデオで確認できます。

 米大統領が演説で「kiss one’s ass(~のけつにキスをする)」という表現を使用したのです。トランプ大統領は30秒以上も拍手喝采を浴びました。

 余談ですが、例えば「バイデンはオバマの手の甲にキスをしている」と言えば、かなり柔らかい表現になったはずです。ある米下院議員に安倍晋三総理とトランプ大統領の関係について感想を求めると、「安倍総理はトランプ大統領の手の甲にキスをしています」と回答しました。

 ちなみに、「brown nose(ご機嫌取り)」は、「相手のけつにキスをしてでも媚びへつらう」という意味です。相手のけつにキスをすれば、鼻が茶色くなるからです。なぜ茶色になるかは、読者の皆さんの豊かな想像力に任せましょう。

 本論に戻ります。筆者はトランプ大統領の上の発言を日本でライブで聞いたとき、即座にマイク・ポンぺオ国務長官を思い浮かべました。ポンぺオ氏はトランプ政権発足後、米中央情報局(CIA)長官を務めた後、国務長官に任命され、側近中の側近としてサバイブしています。スティーブン・ムニューシン財務長官も生き残り組です。

 おそらく、トランプ政権では同大統領のご機嫌取りをしないと生き延びることができないのでしょう。ジョン・ボルトン前大統領補佐官(国家安全保障問題担当)及びジェームズ・マティス前国防長官は信念を曲げなかったので、解任ないし辞任に追い込まれました。

 トランプ大統領は演説の中で、バイデン前副大統領が金正恩朝鮮労働党委員長及び習近平国家主席と交渉をしたらどうなるのかと、支持者に問いかけました。息子のハンター氏が中国から15億ドルを受け取ったので、父親のバイデン氏は中国に対して厳しい交渉がきないというのがトランプ氏の見解です。同氏はハンター氏が中国と不正なビジネスを行った証拠を示していませんが、反中国の感情が強い支持者を盛り上げるには好材料であることは確かです。

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