昨年の山火事は電力会社PG&Eの送電線が破損し、そこから出た火花が原因、と特定されたことで同社に対する巨額の損害賠償裁判が起きた。結局PG&Eは破産申請を行うことになり、多くの住民が今後の電力供給に不安を覚える結果となった。
今年は昨年の過ちを繰り返すことを恐れ、山火事シーズン直前に北カリフォルニア一帯で大規模な計画停電を行ったが、それにもかかわらず大規模火災が起きてしまった。
このPG&Eに対しても、「再生可能エネルギー開発など、グリーン政策に注力するあまり、送電線の地下埋没化や定期点検にかけるコストが削減されていた」という批判がある。ここでも環境問題を重んじたが故に逆に環境を破壊する火災を引き起こす、という皮肉な構図が見えて来る。
カリフォルニア州では今後の山火事対策として、住宅その他の建設用地に規制を設け、山火事被害が予想される場所での建設を抑える、山林地帯と住宅地の間に緩衝地帯を設ける、山林管理を徹底する、避難マップの徹底、などを挙げている。
山火事被害は毎年拡大していく可能性も
しかし夏から秋にかけ、乾いた熱風が内陸部から押し寄せる現象があり、山火事は同州にとって避けて通れない自然災害でもある。今後は計画火災の復活など、より現実的な対応をしていかない限り、山火事被害は毎年拡大していく可能性もある。
さらに深刻なのは、火災跡の清掃事業だ。大規模な山火事が起こると、そこから吐き出される一酸化炭素などの有害ガスは車250台万台分にも相当する、と言われる。しかし実際には火災の最中に放出される有害ガスは全体の15%程度で、火災後の山林がそのまま放置されると50年間でさらに35%の有害ガスが放出される。100年で100%のガス放出に至るという。これは炭化した木材から放出される黒炭によるものだ。
つまり火災が起こると、直ちにその跡を伐採、清掃する必要があるが、州の財源ではそこまで手が回らないのが現状である。放置された焼けただれた木々がさらに環境汚染を深める結果となる。
カリフォルニアの山火事は経済と環境問題を追及しすぎた結果起こった人災なのか、それとも地球温暖化による自然災害の悪化なのか。答えは簡単には出ないが、住民にとっては来年以降の防火政策の徹底が何よりも望まれている。
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