5Gで農機の遠隔監視に弾み
松永さんのように農業ICTの利用に積極的な農家の多い同市は、新技術の開発にもってこいの場所だ。そのため、北海道大学を中心とした無人トラクターの遠隔操作技術の開発で、稲作向けの実証フィールドになっている。
大容量かつ高速の次世代通信規格「5G」の農業への活用も始まった。北海道大学、NTTグループと市で連携協定を結んでいる。2020年春に商業利用が始まる見込みの5Gを先行的に使えるようにし、10月には4台のロボットトラクターに協調して作業させる実証も行った。
トラクターに無人で作業させるにあたり、5Gを使うことで画質の改善が期待できる。画質が悪いと問題になるのは、無人トラクターの周辺の安全確保よりも、むしろ作業の出来具合だという。農家はトラクターが牽引する作業機がきちんと耕起しているか、散布しているかといったことを目視で確認する。遠隔操作で農家の目視と同じように状況を把握するには、画質の向上が望まれる、まして夜間作業となるとなおさらだと黄瀬さんは言う。
「単なるオートステア(自動操舵)だと、作業の重複が減少するだけなので、作業時間は2、3割の減少にとどまります。無人と有人のトラクターを協調作業させることができれば、作業時間が4~6割減ります」
スマート農業のコンサルティングや調査、システム運営などを手掛け、岩見沢市とさまざまな事業で連携するスマートリンク北海道(岩見沢市)の常務・小林伸行さんはこう話す。無人のトラクターが使えるようになれば、労働時間は劇的に減る。この段階を目指した開発が農家や行政、研究機関などを巻き込んで今後も同市で続いていく。
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