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2019年11月21日

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イメージ画像(Ekkasit919/gettyimages)

300ヘクタールの経営体が選んだ可変施肥

 北海道・鹿追町の西上経営組合は、経営面積が300ヘクタールに達する。通常100ヘクタールを超えるとメガファームと呼ばれる。メガをはるかに凌駕する規模だ。そんな同社が3分の1の畑で取り入れるのが、ドローンを使った土壌診断結果を踏まえた可変施肥だ。農家1軒当たりの面積が増え続け、これまで管理したことがなく、どんな特性があるのか分からない土地を預かっても、適切に土を管理できる可変施肥は広がりつつある。

ズコーシャの可変施肥技術(ズコーシャ提供)

肥料代を節減

 西上経営組合は小麦100ヘクタール、てん菜50ヘクタール、バレイショ50ヘクタール、豆類、そばなどを生産する。8戸の農家が集まって法人化した。これだけの規模になると、馬鹿にならないのが肥料代だ。土壌の状況に応じて施肥量を変える可変施肥を今では小麦、てん菜、バレイショの3品目で行う。当初はてん菜から始めた。

西上経営組合の菅原さん

 「てん菜は肥料を多く使うんです。10アール当たり160キロから200キロくらい。なので、費用対効果が大きい」

 専務理事の菅原謙二さんはこう話す。てん菜の場合、収入は単に重量に応じて決まるわけではなく、収穫物に含まれる糖分に応じて買取価格が決まる。そのため、可変施肥で適切な施肥をし、一定の収量が確保でき、かつ糖分の割合が高まれば増収につながりやすい。

 帯広市にあるズコーシャの提供するリモートセンシングによる土壌分析をし、それに基づいて可変施肥のためのマップを作る技術を2015年に試した。初めは畑の中の畝4、5本で始めた。ただ、4、5本といっても、畑の一片の長さが540メートルにもなるので、試した畝の長さは2キロメートルほどになる。

土壌の肥沃度を調べ、可変施肥マップにする(ズコーシャ提供)

 畝一本ずつの収量と施肥量を測ったところ、可変施肥をした方が収量が多く、施肥量は3割減った。糖分の量については「いいところもあればそれなりもある。ただ極端に悪いところはなかった」。「今まで以上の効果はあらわれた。それでどんどんやっているところ」だという。

 ズコーシャの可変施肥の仕組みはこうだ。まず、ドローンに圃場の上空を飛ばせて窒素の肥沃度をセンシングする。そのうえで窒素の肥沃度を示すマップを作る。この段階ではかなり細かく色分けをしているけれども、次の可変施肥マップを作る段階で、施肥機の対応能力に合わせて1辺が10メートル程度の大きめのメッシュに色分けする。

 農家に作物と肥料の成分を設定してもらい、散布量を色分けした可変施肥マップを作成し、農家にデータを渡す。農家はGPSが受信できるトラクターで可変施肥ができる施肥機を牽引し、マップに基づいて適切な量の肥料をまく。

技術にハードが追い付いてきた

ズコーシャの星山さん

 十勝地方では1枚の圃場の中の土質が大きく異なることが珍しくない。窒素分の多い黒っぽい土とそうではない赤っぽい土がまだらになっているのだ。ズコーシャ常務の星山賢一さんはこう言う。

「これまでの土壌分析では畑の中の何カ所かの土を集めて、それを混ぜ合わせて、どこの地点でもない土を作って、それに合わせた肥料設計をしていた。そうではなく、そこにある土に合った肥料を作物に必要なだけ与えて、高品質の農作物を作ろうと考えた」

 十勝とオホーツク地域はどちらも火山灰土で、同社の可変施肥の仕組みが使える。今では農家約30軒が250ヘクタールで同社の可変施肥を使う。GPSに対応したトラクターを使う農家が増えているのを、追い風に感じている。可変施肥の仕組みを開発した当初、可変施肥に対応する施肥機は1メーカーしか作っておらず、しかも高額で、仕組みがあっても実際には使いにくい状況だった。

 西上経営組合で可変施肥を試した初年、てん菜の畑で可変施肥をしたエリアは通常の施肥に比べて窒素肥料の使用量が55%減り、収量は10.3%増えた。

 10アール当たり肥料が8528円の節減になり、1万4771円の増収になったので、計2万3299円の経済効果があった。もしこの条件でてん菜を50ヘクタール生産すれば、約1165万円の経済効果がある計算になる。この年はかなり良い成績だったそうで、他の年や他の農地にこの計算を当てはめることはできないが。

 ズコーシャによると、てん菜では窒素の施肥量が平均で20~30%程度減り、収量が上がる結果が出ている。特に糖分含有量が高くなるので、買取価格が上がる。

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