だからこそ、中国側は対日関係の改善に着手したのである。それは一層に緊密化する日米の安全保障分野における関係への反応と言ってもよいかもしれない。
しかし日本社会は、グローバル・ガバナンスの改善に貢献する意欲を強める中国の行動を理解するための手掛かりが、東シナ海の秩序をめぐる中国の行動だ、と理解している。加えて、明らかにならない理由で邦人が数多く拘束されているような現状では、日本社会が中国の行動に対する警戒心を緩めることはない。中国としても経済的には「改善」を狙いつつも「主権」はもちろん譲れない。ここに対日関係改善を狙う中国にとっての難しさがある。
一方で、中国が日本との関係改善に積極的な姿勢を示している状況下において、日本は「新たな段階」へと押しあがった先の日中関係を考える重要な機会にある。習主席の訪日が中国にとって「欠けていたパズルのピース」が埋まるだけの場とさせてはいけない。
中国の対日関係改善の動機を見抜き、それへの警戒を怠ることなく、同時に日中間の経済関係の可能性も視野に入れて考えるべきだろう。例えば国際協力銀行の調査(19年度)で中国は、日本の製造業の中期的有望事業展開先として、昨年と比較して評価は後退したもののインドに次いで第2位である。日本はこうした事実にも目を向け、相互依存的な経済関係を利用した対中関係の構築に努める必要がある。
中国ももちろんこうした日本の思惑を「理解」していよう。こうした点を踏まえ、両国は「新たな段階」へと押し上がって切り拓(ひら)かれる「日中新時代」の戦略を、この春までに互いに描かなければならない。
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