2024年7月16日(火)

Wedge REPORT

2020年1月30日

不安は募るばかり

 新型肺炎で中国の武漢の交通遮断による封鎖、団体旅行の禁止などが伝えられ影響が大々的に取り上げられた1月27日には、中国人訪日客に人気の大手化粧品メーカーの株価が前週末比で8%も下落するなど、すでに株式市場は、業績に与える影響を織り込み始めている。

 03年のSARSの時は02年11月16日に中国広東省で新型肺炎SARSが発生。02年11月から翌03年8月までに中国の感染者5327人を含む約8000人超、死者が世界で数百人に達している。

 03年4月には新型肺炎SARSと特定され、それから3カ月後の7月5日に終息宣言が出された。今回の新型肺炎はコロナウイルスと感染源が特定されており、「SARSも特定されてから、収束宣言までそれほど時間を要していないし、気温の上昇とともに、感染力が弱まる」という推測もある。

 大手百貨店では「日本人買い物客の来店は新型肺炎発生以降も変わってない」と異口同音だ。しかし、感染者数は中国を中心に日増しに増加している。30日時点での中国本土での感染数は03年のSARSの時よりも上回っている。加速度的に増加する懸念はまだ払拭できないばかりか、不安は募るばかりだ。

 流通業界では、SARS、MARSの時は、まったくといっていいほど、中国人訪日客を始めとしたインバウンドの免税売り上げがなかった。

 だが、現在は大手百貨店では免税売上高が全体の7、8%、さらにドラッグストアやドン・キホーテといったディスカウントストアでもインバウンドに依存しており、とくに中国人依存が従来に比べ比較にならないほど高い。流行が拡大すれば日本国内の消費者の買い物やレジャー意欲が減退しかねない。

 しかもファーストリテイリングが展開する「ユニクロ」は、すでに中国本土を中心とするグレーターチャイナでの売上高が急拡大しており19年8月期は5000億円(全売上高に占める割合が20%超)だった。中国での新型肺炎の拡大は経営のリスクになりかなないから深刻だ。

 今後、仮に新型肺炎の流行が長引くようなら、大手流通各社の業績に一定の打撃は避けられない様相となっており、「これを契機にインバウンド頼み、中国人訪日客頼みの収益構造を見直す機会になる可能性が高まるのではないか」(大手流通業)という声もある。

  
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