中国で新型コロナウイルスによる感染が拡大していることを受けて、湖北省武漢市で操業しているホンダ、日産自動車など日系企業は現地日本人やその家族を帰国させる方向で対応を急いでいる。
ホンダと東風自動車との合弁会社は武漢市で3つの自動車組み立て工場を稼働させている。ここでは1万2000人が働いており、日本人は20人程度駐在している。ホンダは日本人社員への感染リスクを重視して28日に、現地に駐在している日本人とその家族、出張者合わせて約30人に対して帰国させる決定をした。帰国後にどうするかは、政府の指示にしたがって対応するという。
政府は28日、武漢に駐在する日本人を退避させるためチャーター機の派遣を決めた。チャーター機は29日に未明にも武漢を出発し、同日の午前中には羽田に帰国できる見通し。この便では約200人が帰国する予定。この便に間に合わなかった駐在員を帰国させるチャーター機による第二便についても飛ばすことを検討するという。
ホンダの武漢にある工場は広州にある工場と並んで年間60万台の生産規模がある中国では最大クラスの生産拠点。現在は春節の期間のため1月23日から2月2日まで工場は生産を休んでいる。コロナウイルスの感染者の拡大を受けて、春節明けの2月2日から操業を再開するかどうかは未定だという。
このほか自動車では、東風自動車と合弁工場がある日産自動車も、一部の日本人を除いて大半を帰国させる方針を決めた。金融関係では、みずほフィナンシャルグループは武漢に支店を出し、支店長を含む2人が駐在しているが、当面支店長は残り、部下は帰国させる。このほか、パナソニックなどは28日現在、情報収集をしているが帰国させるかどうか決めていないという。
一方で、武漢で5店舗を展開している流通大手のイオンは、現在12人の日本人が駐在している。日本人社員は営業活動を含めて重要な役割を担っており、店舗運営を現地社員にすべて任せられないようで、28日の段階では大半が現地に残って店舗の業務を続ける方針だという。
ジェトロによると、武漢には日系企業が現在、自動車関連などを中心に約160社が進出、社員と家族、出張者を合わせて約500人から600人の日本人が駐在しているという。