2024年12月15日(日)

Wedge REPORT

2020年2月8日

(luplupme/gettyimages)

 これまで主にオフィスビル、マンションを手掛けてきた住友不動産が、羽田空港国際線ターミナルに直結した複合型の大規模ホテルをこの春に開業する。ホテルは1997年から「ヴィラフォンテーヌ」のブランドでグループ会社を通じて営業はしてきたが、700室を超える大規模ホテルは初めて。今年は東京オリンピック・パラリンピックの開催を控えて、ホテルの集客競争は激化することが予想される。担当する桝井俊幸社長にこの空港直結型複合プロジェクトの狙いを聞いた。

不足する空港ホテル

 羽田空港の国際線の利用客数は2011年と比較して、20年には3倍の年間約2200万人になり、1日当たり約5.5万人に増える見込み。10年ほど前までは羽田空港の国際線はアジア路線など近距離が中心だったが、2、3年前からは欧米路線も羽田から発着するようになり利便性が一気に高まった。国際線ターミナルが充実したことで、ビジネスマンの多くがアクセスに時間の掛かる成田空港よりも、近くて便利な羽田空港を利用するようになっている。

「ヴィラフォンテーヌ羽田空港」外観

 しかし、世界で5位の旅客数を誇る羽田空港の周辺(5キロ圏内)のホテル数について桝井社長は「世界の主要空港と比較し圧倒的に少ない。エアポートホテル需要が1万室あるのに対して、2100室しかないので、需要は確実にある。富裕層向けに160室の『プレミア』というラグジュアリーな客室と、ハイグレードな『グランド』1557室の2種類の客室を用意し、多くのニーズに対応したい。ターゲットとなるのはインバウンドだけでなく既存の日本人客も含まれる」と話す。

 1700室を超える客室数のあるエアポートホテルは日本では初めてで、現状ではこのエリアの主要なホテルが富裕層向けのラグジュアリー対応の部屋が少ないと指摘されていたため、同社では富裕層向けに「プレミア」という高級クラスを設け、差別化を図っている。

 住友不動産は「オールインワン・ホテル」の構想のもとに、ホテルを核とした空港に直結した複合開発プロジェクト「羽田エアポートガーデン」の計画を進める。国から土地を借り受けて、国際線ターミナルに隣接した4.3ヘクタールの土地に、宿泊施設とこのエリアに相応しい複合業務施設を作ることでより多い集客効果を狙っている。羽田空港が今後、国際線旅客の拡大が見込まれる中で、レストラン、温泉、イベントホール、会議室など多様な施設を併設したのが特長で、戦略的な街づくりを目指している。中でも、12階に設置した広さが2000平方メートルある富士山を眺めながら楽しめる天然温泉の展望露天風呂は人気になりそうだ。

 「羽田エアポートガーデン」は近接する開発プロジェクト「羽田イノベーション・シティ」ともつながる計画で、国際線ターミナルの周辺が商業施設を含む新しい街に生まれ変わる。その「羽田エアポートガーデン」内にはショッピングゾーンも日本文化を発信する逸品に出会える90店舗のショッピングゾーンを用意し、ジャパンプロムナードの「羽田参道」に仕立て上げたい考えだ。桝井社長は「これからは、こうした複合型にすることで、空港の利用客でなくても遊びに来てもらえるような施設にしたい」と期待する。

 同社は、羽田空港を含む「ヴィラフォンテーヌ」ホテルが有利に利用できるメンバーシップの登録を昨年12月からスタート、ビジネス客を中心に登録を増やして囲い込みを狙っている。

 また、羽田空港の南西に多摩川の河口を挟んで位置する川崎市殿町地区は国際戦略特区「川崎キングスカイフロント」に指定され、ライフサイエンス、環境分野の研究施設が集結している。ジョンソン・アンド・ジョンソンの東京サイエンスセンターもあるなど、世界から研究者の往来がある。この「キングスカイフロント」と空港とは羽田連絡道路で20年度中には結ばれる計画で、そうなれば「羽田エアポートガーデン」の存在価値が一段と高まることになる。


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