「大規模イベント」の基準はない?
一応、政府は「大規模イベント」の基準について特に何も設けておらず、自粛要請を行ったものの開催の可否については主催者側に判断を委ねている。「この点が実は〝曲者〟になっている」と指摘するのはJリーグの関係者だ。
そして「これはあくまでも推測の域を出ないが」と念押しし、大多数の見方として次のような流れも説明した。
「簡単に言えば、東京五輪に直結するイベントや試合とそうでないものとの差だろう。政府側は首相の要請前から我々を含めた各競技団体へ執拗に自粛のプレッシャーを水面下でかけてきていたが、東京五輪の代表選考に直接的な形で大きく関わる試合やレースに関してだけは目をつぶるつもりだった。だから代表選考レースのマラソン3大会に関して、政府は見て見ぬふりを決め込んでいる。まず間違いなく、こういうシナリオが存在すると見ていい」
東京、びわ湖毎日、名古屋ウィメンズはすべて東京五輪の代表選考を兼ねた重要なレース。政府の要請を受けて無期限延期を決めれば、五輪種目の目玉と言えるマラソンの代表選考に悪影響を及ぼす。そしてイメージ的に見ても、ただでさえ危ぶまれている東京五輪の開催にさらなるダメージを与えることは必至だ。是が非でも東京五輪の開催に踏み切りたい政府としては大規模イベントの自粛を求めながらも、このマラソン3大会については実施を強行してもらわなければやはり都合が悪いのだろう――。
自粛ムードの中で大きな矛盾が生じている現状を鑑みれば、そう思われても仕方がない。前出のNPB関係者もこう憤る。
「結局、政府は逃げ腰で責任を取りたくないから判断を主催者任せにしている。本当にウイルスを封じ込めたいならば、きちんとした分かりやすいルールを設けて大規模イベントの全中止、もしくは延期を超法規的措置として通達すべき。国難と考えているくせに法律上で強権がないからできないなどと、言い訳ばかりだ。完全に自粛ができず中途半端なままなら、ウイルスの拡散に歯止めはかからないと思う。これでは何のために我々団体側や応援してくれるファンが涙を飲んでいるのか、何の意味もなくなってしまう」
新型コロナウイルスに本気で立ち向かう覚悟は出来ているのか。東京五輪の強行開催ばかりにとらわれがちな大会組織委員会、よく分からない立ち位置のスポーツ庁にそれを問いたい。
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