世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2020年3月10日

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 2月21日に投票が行われたイランの議会選挙では、保守強硬派が圧勝した模様である。諸勢力別の当選者数はまだ発表されていないが、総議席290のうちの1割以上を占めるテヘランの30議席は、保守強硬派が独占したとされている。

David Wall/Moment

 最近イランで行われた全国規模の国政選挙では、2017年の大統領選挙で、ロウハニ大統領が改革派に支持され、地滑り的勝利をおさめ、希望と期待があった。有権者のほぼ4分の3が投票した。2017年の大統領選挙は、イランが締結した核合意への国民投票とみなされていた。ロウハニの大勝は、イラン人の西側との再関与への願望の反映であった。

 今回の議会選挙は、2017年の大統領選挙とは対照的に、投票率は42.5%(前回の議会選挙では62%だった)にとどまり、保守派が圧勝した。イラン国民は選挙に行く気持ちをかなりなくしていたと言える。その一つの大きな要因は、保守派の指導部による露骨な介入である。選挙への立候補者は監督者評議会(Guardian Council)の審査を通る必要があるが、今の議会の90人の議員を含む多くの改革派、穏健派の立候補がこの審査で阻止された。それがこの低い投票率になった原因であると思われる。

 テヘランの保守強硬派の指導者はMohammad Bagher Qalibafであるが、同人は革命防衛隊の空軍司令官であった人である。彼が新しい議会の議長になると言われているが、これは革命防衛隊が議会においても大きな影響力を持つことを意味する。イラン議会は不完全ではあるが、国民の声を反映する機能を果たしてきたが、今度の選挙は、その機能が損なわれてきていることを示している。投票率の低さは選挙が政治的正統性を与えるとの政権側の主張を掘り崩している。また国の指導部と若い国民の間で意識のギャップは広がっている。しかし、政権側は国民の反対も力で弾圧すると思われる。

 今回の選挙結果を招いた、さらに大きな要因は、トランプ大統領の最大限の圧力戦略であろう。これはイラン経済に前例のない負担を課した。トランプはイラン核合意からの離脱と制裁の目的はイランの行動を変えることであると発言してきた。核合意の再交渉、武装勢力の支援の停止、ミサイル計画の抑制などが目標とされた。

 今日までイランがトランプの要求に従う兆候はない。逆にイランは核活動を増やした。西側との交渉に反対し、地域での攻撃的政策を行ってきた強硬派は力をつけている。ロウハニを信じ、核合意が西側との雪解けをもたらし、国内でも変化が生じるとしてきた改革派は深刻に弱体化した。ここ7年間で初めて選挙で強硬派が勝ったことがそれを示している。ロウハニ大統領は今後、議会との関係で難しい立場に立たされるだろう。来年は大統領選挙の年であるが、ロウハニ再選の可能性はほぼなくなったと思われる。米・イラン関係についていえば、イラン国内政治で保守強硬派が力をつけ、その調整はこれまで以上に難しくなるのも確実であろう。
 
  なお、コロナウイルスによる感染者がイランで急速に増えている。副大統領や保健省の次官などの幹部までもが感染している。政権側にとり、この問題の処理に失敗すれば、強硬派政権への支持に大きな影響を与える可能性がある。

  
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