この一連の流れには、読者も多くの疑問を抱いていることだろう。元々8200万株を保有していた「建築安装公司」も「聖泉禾公司」も民営企業であり、「光明集団」は創業当時から国からの出資を受けていない。8200万株が国有資産であるなら、無償譲渡すれば国有資産が流出することになる。馮永明の逮捕後に、国資委に「給付」されたのはなぜなのか。その上、株は「給付」されたにもかかわらず、なぜ馮永明に「汚職」の刑事責任を負わせるのか。
馮永明は本当に国家公務員なのか?
馮永明は第一審で汚職罪を適用され、執行猶予付きの死刑判決を受けたわけだが、民営企業・「光明集団」の代表であった馮永明を国家公務員とする根拠はあるのか。
確かに、74年から市の第二経済局で働いていたが、79年には辞めている。香港企業との合弁事業は、公有制の消防器材工場の一部を独立させた「木工公司」を主体に行ったわけだが、合資企業として設立した「伊春光明家具有限公司」での職務は、企業の定款に基づいて選挙で決まったものである。
伊春市の中級裁判所は、「1991年5月15日に馮永明が伊春光明家具集団公司(以下、「伊春光明」)の総経理に任命された」という文書をもって、馮永明の国家公務員の身分を認定し、汚職罪を適用しようとしている。
しかし、これは馮永明にとっては納得のいかない話だ。90年代初め、市の関連部門は市内の家具生産企業をひとまとめにし、統一的に管理する目的で、「伊春光明」をつくろうとしようとしたことがある。だが、さまざまな原因で「伊春光明」は最終的に設立されなかった。馮永明の総経理就任の書類が残っているとしても、実際にはそれは実現していなかったのだ。
株の評価額はどう算出したのか
では、汚職に関わる金額8億元というのはどのように算出したのか。裁判所は「個人で企業の株式を支配する方法によって「山東寧津県聖泉禾実業投資有限公司」の株6億6192万1257.62元を略奪」「株式譲渡の機会に乗じて資産隠匿などの手段によって光明集団株式有限公司の株7988万1052.83元の公金を着服」と説明している。
前者の数字は例の8200万株の評価額である。先述のとおり、「聖泉禾公司」は馮永明個人の会社である。07年に資本金500万元で登記している。「菏澤金木工貿易有限公司」(「菏澤金公司」)が51%、「寧津県群英家具有限公司」(「群英家具」)が49%を出資している。「菏澤金公司」は馮永明が350万元の資金で設立した会社で、「群英家具」の210万元の出資者は「菏澤金公司」である。
「先に人を捕まえて刑事手続きを行うのは
もってのほか」
8200万株は06年に「聖泉禾公司」が「建築安装公司」から買い入れた。「聖泉禾公司」はこのほかにも22企業の株式を保有し、3つの長期投資を行っていたが、それらも含めて評価額を6億6000万元としたという。北京大学法学部の週俊業教授はA記者の取材に対し、「8200万株以外の資産の扱いをも議論するなら、民事手続きで権利関係を明確にしてからにすべきだ。先に人を捕まえて刑事手続きを行うなんてもってのほかだ」と話している。
では、後者の7988万元あまりはどのように計算したのか。これは、馮永明と兄弟たちとの「共同汚職」として認定したのだという。馮永明は2003年、「大連工貿公司」の75%の株式(出資額1875万)を弟の馮志明らが主な出資人である「大連春浜家具有限公司」(以下、「大連春浜」)に譲渡した。株価評価会社の「遼寧宏信資産評価公司」は、2003年6月30日を基準日としてこの株式価格を4865万元と評価し、「大連春浜」は同額を「大連工貿公司」に払っている。
それでは、7988万元はどこからきた数字なのか。何者かが別の株価評価会社・「遼寧東方陽光資産評価有限公司」(以下、「東方陽光」)に依頼し、2007年3月31日を基準日として譲渡された株価を総額1億2900万元と評価、その上で、「大連春浜」が既に支払った4865万元を差し引き、差額の7988万元を汚職金額としたのだという。
裁判所は、「東方陽光」を含め、「北京中聯資産評価有限公司」、「大連中恒信土地房地産評価有限公司」、牡丹江市人民検察院に評価額の鑑定を依頼しているが、これらの組織は司法部が認定する国家司法鑑定人・司法鑑定機関リストに含まれていない。最高人民検察院は検察機関が上級検察院に鑑定を委託できるとしているが、伊春市人民検察院と牡丹江人民検察院は等級が同じ検察院であるため、資格を有していない。