2024年4月26日(金)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2012年5月17日

人の「財産権」と「命」を簡単に奪ってはならない

 馮永明の案件は、実は中国国内でさえ、まだあまり報じられていない。

 しかし、ここで私が紹介した内容を見るだけでも、事態が非常に複雑かつ深刻であることがわかるだろう。

 前出の馮永明の弁護人である浦志強弁護士は一審では自白の強要を追及することに焦点を置いたという。二審以降は財産権をめぐる争いを前面に押し出す準備をしているが、先述のとおり、現在に至るまで二審は開かれていない。内々に二審を開廷せず、一審を維持する旨の通知が出された(このような形で二審を行わないのは違法であるが、裁判所の判断なのだからなすすべもない)。馮永明は黒龍江省高級裁判所に再審請求を行ったが、公開審理されるかどうかはわからないという。

 隣国の研究者が口を出すべき問題でないと言われるかもしれないが、中国が法の支配を貫くというのなら、事実を徹底的に洗い出し、全容をはっきりさせる必要があるのではないか。私は、リスクを背負いながら取材を続けるA記者や弁護士の浦志強の勇気と努力をたたえるとともに、人の財産の権利、そして命が簡単に奪われることがあってはならないと主張したい。

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