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2020年3月27日

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出井康博 (いでい・やすひろ)

ジャーナリスト

1965年、岡山県に生まれる。ジャーナリスト。早稲田大学政治経済学部卒業。英字紙「ニッケイ・ウイークリー」記者、米国黒人問題専門のシンクタンク「政治経済研究ジョイント・センター」(ワシントンDC)客員研究員を経て、フリー。著書には、『移民クライシス 偽装留学生、奴隷労働の最前線』(角川新書)、『ルポ ニッポン絶望工場』(講談社+α新書)、『長寿大国の虚構 外国人介護士の現場を追う』(新潮社)、『黒人に最も愛され、FBIに最も恐れられた日本人』(講談社+α文庫)などがある。

富裕層中国人留学生が人気

 この1~2年、日本語学校の間では、中国人留学生が「人気」だ。法務省入管当局は“偽装留学生”問題を認識し、アジア新興国出身者へのビザ発給を厳しくしている。かつては中国人にも“偽装留学生”は多かった。しかし経済発展が進んだ現在では、むしろ富裕層の留学が目立つ。ビザ交付率も、アジア新興国よりずっと高い。

 日本語学校としては、ビザが発給されなければ新入生が減り、そのぶん経営に打撃となる。そこで学校側は、確実にビザ取得が見込める中国人を受け入れようと努める。中国人の場合、ベトナム人などと比べて学費を取りはぐれる心配もない。そんな頼みの中国人留学生が、今春は受け入れられないのだ。

「新型コロナの影響が出ているのは、中国やベトナムだけではありません。ネパールだってそうですよ」

 そう話すのは、アジア新興国から留学生を日本語学校に斡旋している日本人エージェントだ。

 ネパール出身の留学生は約2万8000人を数え、国籍別で中国とベトナムに次いで多い。ベトナムと同様、“偽装留学生”の送り出しが目立つ国でもある。そのネパールからも留学生の受け入れが止まっているという。

「ネパール人に対する在留資格認定証明書(※ビザ発給前に入管当局の審査を経て出される証明書)交付率は、去年と比べても悪くなかったんです。だけど、ネパール教育省が学費の送金をさせてくれない。自国民を日本へ送り出したくないのです。学費が支払われなければ、(現地の日本)大使館へのビザ申請もできない。おかげで私たちの商売もあがったりですよ」

 日本が外国人から“危ない国”とみなされるのは、今回が初めてではない。2011年、東日本大震災によって福島第一原発事故が起きたときもそうだった。

 事故による放射能の影響を恐れ、当時、留学生全体の7割以上を占めていた中国人が日本から去り始めた。結果、留学生の増加に歯止めがかかり、政府が2020年に達成を目指していた「留学生30万人計画」も実現も危うくなった。すると政府は、ベトナムなどアジア新興国からの“偽装留学生”受け入れに舵を切る。

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