州政府との連携もちぐはぐ
CDCというのは各自治体首長が疫病などへの対策を行うにあたり、最初に相談する機関だ。カリフォルニア州で感染者が出たときも、ニューソム知事はまずCDCに連絡を取り、検査キットの不足を訴えた。しかしCDC内部では、PUIの割り出しに忙しく、しかも誤った情報を各州の保健衛生担当に流していた事実もある。例えばネバダ州に対し、80人のPUIがいる、と通告したが、その一部はネバダではなくニューヨーク州の住民で、その指摘を受けてCDCは今度はニューヨークに同じリストを送る、などドタバタ対応だったという。
これは政府側の対応の遅れもあるのだが、州政府からCDCに対し、「対策費用として政府からの支援はあるのか、それは例えば州の人口あるいは感染者数などの規模に応じて行われるのか」という問い合わせがあったが、CDCはこれに答えることができなかった。
確かに初期の段階から、様々な噂が飛び交っていた。米政府が国民1人1人に1000ドル程度を支給する、休業補償を行う、家賃生活者に対し1カ月の猶予を与える、学生ローンの返済期限を延長する、などなど。ウィルス検査を保険で行えるのかというのも大きな話題だった。現在では保険を持つ人に対してウィルス検査は対象となる、とされているが、無保険の人をどう扱うのかははっきりと発表されていない。
CDCに問い合わせを行ったネバダ州職員は「残念ながらはっきりとした返答を行うことはできない。我々も様々な噂を耳にしている」という返信を見て「ともに混乱しているというわけだ」と返信している。
CDCが上記の検査対象ガイドラインを公式に発表したのは2月19日だが、その時点で既に「陽性患者の中には発熱症状がない人もいる」という事実が明らかになっていた。4日以上の発熱がないために検査を受けられない陽性患者も相当数いたと思われるが、この辺りは日本と全く同じ事情だ。
CDCでは感染症対策としてフェーズを設けていた。フェーズ1では、CDCが主体となってPUI(調査する患者)を特定し、検査を実施する。フェーズ2になると、今度は自治体が独自の判断でPUI特定と検査を行い、その結果をCDCにフィードバックするというもの。
フェーズ2への移行は、2月末頃が想定されていたが、検査キット開発の遅れにより、その後もCDCが全国から送られてくる検体をテストし、結果を返す、という作業が続いた。CDCの目論見としては、検査キットがスムーズに開発されて行
また、CDCは独自のウェブプラットホームであるDCIPHERを使い、全国の自治体との情報共有を求めたが、このプラットホームの使い方で自治体担当者を教育する必要があった、自治体からリストを送ったにもかかわらず、CDCからリスト送付の要請が繰り返される、などの混乱も認められたという。
しかし、今さらCDCの対応の遅れを指摘しても仕方がない。ウィルスは米国全土に広がってしまった。この未曾有の危機をいかに乗り越え、収束に向かわせるのかが今後のCDCの腕の見せ所と言えるのかもしれないが、毎日会見を開き国民からの支持が急速にアップしているニューヨークのクオモ知事などと比べ、CDCのプレゼンスが見られないのは不安なところだ。
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