前向きに読み解く経済の裏側

2020年3月30日

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塚崎公義 (つかさき きみよし)

経済評論家

1981年 東京大学法学部卒、日本興業銀行(現みずほ銀行)入行。主に経済調査関連の業務に従事。2005年 銀行を退職して久留米大学へ。現職は久留米大学商学部教授であるが、当サイトへの寄稿は一個人として行うものであるため、肩書きは「経済評論家」とする。

借りられても金利が高いと利払いが負担

 資金繰りに困った借り手は「高い金利を払いますから貸して下さい」と頼むかもしれません。貸し手は「リスクはあるが、高い金利がもらえるなら」と考えて貸すかもしれません。

 しかし、話は簡単ではありません。仮に資金を借りられても、他の貸し手たちは「あれほど高い金利を払わないと、誰も貸してくれないのか。あの借り手は本当に危ないのかもしれない」「あれほど高い金利を払い続けたら、利払い負担で資金繰りが破綻するのではないか」などと考えて、一層慎重になるかもしれません。

金融機関が自分の資金繰りを心配

 金融機関相互に疑心暗鬼になると、金融機関が自分の資金繰りを心配するようになります。「他行から借りられなかったらどうしよう」というわけですね。銀行は相互に巨額の貸し借りをしていますから、他行から一斉に資金を引き揚げられると資金繰りに窮する懸念があるわけです。

 赤字の金融機関が増えてくると、預金者たちが不安になるので、デマによる取り付け騒ぎが発生する可能性も高まります。

 そうなると、銀行は「金庫に現金を積み上げておかないと不安だ」と考えるようになり、貸出等に慎重になります。それにより、資金が借りられない借り手企業が困るのみならず、他の銀行が一層自分の資金繰りを気にして貸出に慎重になる、という悪循環も生じるわけです。

自己資本比率規制があるので貸し渋りせざるを得ない

 銀行には自己資本比率規制が課せられています。これは条約なので、主要国の銀行に共通するものです。内容は、大胆に簡略化すれば「銀行は自己資本の12.5倍までしか貸出を行なってはならない」というものです。

 銀行の貸し倒れ損失が膨らみ、赤字になると自己資本が減ります。すると銀行は減った自己資本の12.5倍までしか貸出が出来ないので、貸出を絞ります。黒字が続いて何の問題もない借り手が突然返済を求められたりするわけです。「貸し渋り」「貸し剥がし」と呼ばれる現象です。

 借り手は何も悪くありませんが、貸し手の銀行も意地悪で貸し渋りをしているわけではありません。法律に従っているだけです。しかし、借り手は銀行を恨みます。それは仕方ないことなのですが、それが問題の解決を困難にするのです。

 「銀行に増資させて、政府が引き受ければ、銀行の自己資本が増えるから貸し渋りをしなくて済むようになる」と考えて政府が予算を用意しても、貸し渋りを受けた中小企業が「銀行を助けるために税金を使うのは許さない」と反対するからです。

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