世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2020年4月24日

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 イスラエル政治は混迷に次ぐ混迷を続け、昨年4月、9月、本年3月の総選挙を経ても、連立政権ができないという状況にあった。コロナウイルスが拡大する中、3月下旬に、野党連合「青と白」の党首ガンツ元参謀総長は結局、ネタニヤフとのいわば共同政権を樹立する決断をした。合意によれば、ネタニヤフは今後18か月間イスラエルの首相にとどまり、その後、ガンツがイスラエル首相になることになる。

sezer ozger/iStock / Getty Images Plus

 合意に対しては賛否が分かれている。今回のガンツの決断を支持する人々もいるが、ガンツの決断に強く反対している人々もいる。例えば、同じワシントン・ポスト紙でも、4月1日付けの社説‘Netanyahu’s chief rival agrees to join him in government. It’s a patriotic move.’はガンツの決定は愛国的で現実的であると評価したのに対し、イスラエルのジャーナリストゲルショム・ゴレンバーグは‘Benny Gantz just sold out Israel’s perilously ill democracy’(ベニー・ガンツはイスラエルの危機的に悪化した民主主義を売り渡した)との論説を同紙に寄せ、ガンツの決断を強く批判している。社説は、ガンツが新政権で外相を務めるのではないかとして、トランプとネタニヤフが発表した「出来の悪い」中東和平案が修正されることに期待を示している。

 ガンツの決断で「青と白」党はほぼ真二つに分裂した。その結果、今後できる連立政権の基盤は、ネタニヤフのリクードとその友党、「青と白」党のガンツ支持派からなることになるが、ガンツ支持派は政権基盤全体の3分の1にも満たないことになる。

 ガンツが18か月後の首相交代の約束をネタニヤフに守らせられるのか、あるいは、上記WP社説が言うように、ネタニヤフの西岸入植地やヨルダン渓谷併合のような2国家解決をほぼ不可能にする危険な措置を止められるのか。ガンツがそうしようとするのは確実であるが、イスラエルの閣議決定は全会一致ではなく、多数決で行われる。政権の基盤でガンツ派は「青と白」の分裂の結果、3分の1程度にとどまるので、どこまで主張を通せるのか、疑問がある。 

 ガンツがアラブ共同リスト(アラブ政党の連合体)を含む支持者を自らの連立政権の基盤とすることが良かったのではないかとも思われるが、それには「青と白」党内で強い反対があり、できなかったのであろう。ラビン元首相はアラブ系議員をも連立の基盤にしたが、ガンツにはそれは無理であったということであろう。

 この新政権の合意はようやくできたものであり、イスラエルの政治が正常化することが望ましいが、そうなるとの見通しを持ちがたい事情もたくさんある。ガンツは4月11日に連立交渉の難航を理由にリブリン大統領に対し4月13日の組閣期限を延長するよう要請した。しかし要請は拒否された。リブリン大統領は、ガンツの組閣期限が切れた場合は、国会に対して3週間以内に新たな首相候補を選ぶよう求めた。今後も政権内部で揉める状況が継続するように思われる。

  
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