世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2020年2月14日

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 1月28日、トランプ大統領は、イスラエルとパレスチナとの間の中東和平についての計画を発表した。計画の主要点は次の通りである。

bluebearry/:iStock / Getty Images Plus

 ・エルサレムは、引き続き、イスラエルの不可分の首都であり続ける。パレスチナ「国家」の首都は、エルサレム東部(注:パレスチナ側が領有権を主張している東パレスチナではなく、その外側の隣接地域の意か)に置かれる。

 ・ヨルダン渓谷およびヨルダン川西岸のすべての入植地に対するイスラエルの主権を認める(注:パレスチナ側は同地域全体への主権を主張)。

 ・パレスチナ「国家」は、国境、空域、領海、国際関係のコントロールを含む通常の主権を大きく制限され、イスラエルはパレスチナ領土にその兵力を送り込む権利を含む「安全保障上の責任」を保持する。

 ・将来のパレスチナの領土と目されるところでの入植地は、次の4年間、現在の規模を超えて拡大されない。

 今度のトランプの中東和平計画は、驚愕させられるものである。トランプは1月28日のワシントンにおけるネタニヤフ首相との共同記者会見で、計画について「私の計画は、双方にウィン・ウィンの機会を提供する。パレスチナ国家が成立してもイスラエルの安全を脅かさないようにする、現実的な2国家共存策だ」と豪語した。しかし、全く和平計画と呼ぶに値しないものである。

 平和は両当事者の合意がなければ達成できないが、今度のトランプの和平計画は、相手側のパレスチナとは協議せずに、イスラエルと話し合った結果を公表したものである。したがって、和平に結び付く可能性は皆無といってよいと思われる。パレスチナ側は、この和平計画を歴史的侮辱と呼んで、拒否している。この和平計画の公表は、中東和平の公正な仲介者としての米国の役割が終焉することを意味する。

 中東は、イラン、トルコ、ユダヤ、アラブの4民族が角逐する地域であると見てよい。この4者のうち、イラン、トルコは、この中東和平計画を強く批判している。アラブ側はどうかというと、この計画が発表されたホワイトハウスの会合には、UAE、オマーン、バーレーンの大使が出席し、またエジプトはこの和平計画を慎重に検討すべきであるとしているのに対し、ヨルダンは批判的な姿勢を示しており、分裂状況にあるように見える。しかし、アラブの民衆はパレスチナに同情的であり、それがアラブ諸国の対応に今後影響を及ぼしていくと思われる。

 今回の和平計画は、力による領土の拡大を禁ずる戦後国際法の重要な規範に反する愚挙である。ロシアは2014年にクリミアを占領併合した。当然、国際法に反する不法行為である。イスラエルが1967年に占領した自分の領土でない領土を併合することの違法性も、占領後にかかった時間にクリミア併合の場合と差はあるが、本質的には変わらない。欧州諸国も日本も、そういう不法なことは支持できないだろう。

 この中東和平計画は、もしトランプが再選されなければ、その段階で意味を失うだろうし、トランプが再選されても、実施に時間がかかり、結局、歴史の屑籠に打ち捨てられると思われる。

  
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