2024年4月19日(金)

WEDGE REPORT

2020年4月21日

日本より充実した補償内容

 補償について、日本政府は現金給付1つとっても迷走し、自粛要請の範囲は国と東京都で揉めるなど、ラグビーでいう「ワンチーム」になれていなかった。日本は外出の自粛などを含め全てにおいて禁止ではなく〝要請〟だ。「禁止」とすればいわゆる「要請と補償はセット」の言葉が義務化されるため、責任と財政的義務を負いたくないから「要請」としているのは容易に想像がつく。

 香港は厳しい措置をしたからこそ補償を充実させた。個人には永久居民に1人1万香港ドル(約14万円)支給することを決め、所得税は、上限を2万香港ドル(約28万円)として100%還付する。鉄道は八達通というSuicaのような電子マネーを利用した場合、2020年7月1日~21年1月1日の半年間、運賃を20%割り引く。

 法人で見ると、解雇しないことなどを条件に上限を9000香港ドル(約12万円)として給与の50%を6カ月間補填し、法人税も2万香港ドルを上限に100%免除する。200万香港ドル(2800万円)を上限とした香港政府による100%保証の低利ローンも行うほか、公営住宅に住んでいる低所得者を対象に1カ月分の家賃補助も行う。

 業界別でも細かく補償するのだが、例えば、飲食業界では、店舗の面積に応じ25万~220万香港ドル(約350万~3000万円)を支給し、カラオケ、バーには5万香港ドル(約70万円)、ゲームセンターなど閉鎖した業種には10万香港ドル(約140万円)を支給。航空業界は大型機1機当たり100万香港ドル(約1400万円)などを助成する。

 このように香港はかなり充実した補償を伴った経済対策を策定したが、それでも政策を実行するまで時間差があるため、それより前に小売業や飲食業を中心に倒産が発生した。日本も今後、レストランや小売店などの倒産が増加することは覚悟しておくべきだろう。まして補償が十分でないので事業継続としても香港よりつらい現実を見ることになりそうだ。

 安倍首相は何を補償するかではなく、何を補償しないかを国会や記者会見ではっきりさせたとも言え、生き残るための希望の光は小さい。ならば、レストランにしても「営業するかしないか」という「ゼロイチ / 二者択一」ではなく、前述の香港のように感染リスクを減らした上で営業を認めるなど、工夫する必要があるのではないか? なぜ日本の官僚はこういった柔軟な発想ができないのか、と愚痴でもこぼしたくなるが、日本の実情にあったより良い政策が出てくることを期待したい。


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