変節と提灯持ち
大統領はこの当時、ウイルスのまん延を深刻にとらえていないのではないかとの質問に、「フェイクニュース」と一蹴。当初、楽観論を繰り返したことを否定し、「1月末に中国からの入国禁止を決定したのは自分だ」と対策に先手を打ったことを強調している。だが、大統領の“変節ぶり”はこれだけではない。遅れに遅れたPCR検査についてもそうだ。
大統領は3月初めの時点で、「希望する人は誰でも検査を受けられる」と言明したが、その後検査態勢を改善できず、その責任をオバマ政権時代から引き継いだ旧式な制度のせいにした。大統領は4月に入ると、今度は検査が連邦政府ではなく、州の管轄だとして責任を転嫁した。
FOXテレビのハニティ氏らの豹変ぶりも大統領と同様だ。同氏は最近、自分がウイルスの危険性を軽視していたことを忘れたかのように、感染拡大にはずっと懸念を表明してきたと述べる一方、2009年に起きたインフルエンザ流行の際、多くの死者を出したのはオバマ政権だと批判。トランプ大統領はこのオバマ氏の失敗を追及せず寛大だ、と称賛してさえ見せた。
しかし、ウイルスを軽く見た親トランプ派の発言について、「単なるトランプ応援ではすまない。なぜなら人の生死に関わる問題だからだ」(米紙)という指摘は重い。例えば、ハニティ氏の番組はケーブルテレビでは560万人という最大の視聴者がいると言われる。しかし、視聴者には高齢者が多く、ハニティ氏のウイルスに対する当初の楽観的な見方を信じた人が感染した可能性は否定できない。
トランプ大統領就任当初の支持者だった保守派の著名なラジオ司会者はニューヨーク・タイムズ紙上で「トランプ氏の“提灯持ち”の連中はうそをつきまくっておいて、どんな顔して人々と向き合うのか。彼らには社会的な良心はないのか」と疑問を投げ掛けている。