2024年11月22日(金)

インド経済を読む

2020年4月28日

「ロックダウン延長」の中での生活

 現在日本でも「緊急事態宣言」により東京をはじめ都市部は人の往来が極度に減って、自宅にとどまる人が多く不便な生活を送っているだろう。そのためインドの「ロックダウン」も同じような不便な生活かと思う人もいるかと思うが「ロックダウン」は日本の「緊急事態宣言」よりもずっと重く厳しい。

  • 基本的に食料品や医薬品の購入以外の目的での外出はできない。
  • そのため、食料品・医薬品以外の店は基本的にすべて閉じられている。
  • 外出時はマスク着用が義務。
  • 警察も巡回しており、見つかると外出目的を質問される。

 などである。

 さらに「ホットスポット」に指定された地域は、食品・医薬品購入目的の外出も禁止であり、すべてをデリバリーサービスに頼らざるを得ない。私も散髪にすら行けず髪の毛は伸び放題。付け加えると現在気温40度を超すデリーにおいて、仮にエアコンなどの家電が壊れても修理工は来てくれないので故障しないことを祈るのみだ。

 そのため現地に残っている日本人駐在員の生活は過酷だ。

 帯同家族はずいぶん前に安全面を考慮して帰国してしまい、さらにインドの生活はメイドやドライバーがいること前提で成り立っていたのに彼ら彼女らも故郷に帰ってしまったため、掃除洗濯そして料理などの家事もすべて自分で行い、また唯一許されている食品の買い出しの外出も灼熱のインドを片道1時間近く歩いてスーパーまで行く人もいるほどだ。その道では、外出禁止令で収入が途絶えた物乞いも増えており「彼らから感染するのでは?」との恐怖もあるので食料調達も躊躇するとも聞く。メンタル面の問題も無視できなくなるだろう。

 このように現地日本人目線でもこのロックダウンの再々延長は、経済面はもとより生活面でもかなりハードなものになりつつあるのだ。

徹底できなかったインドの「ロックダウン」

 しかし、3月に電光石火で有無を言わせぬこのような厳しい「ロックダウン」という手段をとったにもかかわらず、どうしてインドでは感染者数は収まる気配を見せないのだろうか。

 ひとつは、貧富の差の問題だろう。

 ご存じの通りインドは貧富の差が非常に大きな国だ。文字を読めない人も多いので選挙の投票では候補者名前や政党名ではなくシンボルマークで投票するというシステムがある国において、新型コロナウィルスの存在を13億の全国民に説明し、その対応を徹底するのは容易ではなかったということだろう。また、今回ムンバイでのクラスター発生となったのはスラム街であるダラヴィ地区だ。この世界最大のスラム街にはたった2~3平方キロメートルに100万人近い人が住むといわれており、その密集度の高さと衛生面の劣悪さで一気に感染が広まったと考えられる。

 次が日本でも取沙汰され始めた「リモートワーク格差」だ。

 自宅でもリモートワークできるいわゆるサービス業やホワイトカラーは「Stay home, Stay safe」が可能かもしれないが、メイドやドライバー、工場労働者にとってリモートワークは不可能であり、外出禁止令は即収入が途絶えることを意味する。インド政府も各企業や雇い主にこれらの人達への報酬・給料を100%払うように声明を出しているが、当然補償や補助金はなく、結果として前述のムンバイの暴動のように仕事を失った人達による暴動につながっている。

 実際私の自宅の近所でも4月に入ってから働いているメイドさんをチラホラ見始めている。これは現金収入が欲しいメイドたちと、慣れない掃除洗濯に疲れたインド人家庭の利害が一定したのだろう。メイドの中には複数の家の仕事を掛け持ちしている人もおりこのあたりからも、外出禁止令にもかかわらず人との接触が減らせなかった原因があるのではないだろうか。


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