存続の危機に立たされているBCリーグ
そういう意味で、今後が注目されるのが、野球の独立リーグ、関東・北陸などで試合が行われているルートインBC(ベースボールチャレンジ)リーグだ。いまやNPBへの選手供給源にもなっているこのリーグが、コロナ禍によって試合ができず、存続の危機に立たされている。
BCリーグ各球団の監督は福島・岩村明憲(元ヤクルト、MLBレイズ)、神奈川・鈴木尚典(元横浜)、栃木・寺内崇幸(元巨人)など全員がNPB出身。今年から参加球団がNPB並みに12球団に拡大し、東西2地区制で前後期計70試合を開催する予定だった。
もともと、NPBを目指すアマ選手の〝プロ予備軍〟として結成されたこともあり、選手のモチベーションも非常に高い。私も何度か試合を取材したことがあるが、とくに印象的だったのは2017年7月12日、ジャイアンツ球場で行われた巨人三軍と栃木とのプロアマ交流戦である。
両チーム合計22安打が飛び交う乱打戦となり、10-6で栃木が勝利。当時、川相昌弘・三軍監督(現読売スポーツアドバイザー)は、こう言って栃木の健闘を称えていた。
「きょうは栃木の気迫を感じました。栃木はBCリーグでは前期最下位で、ウチと4試合で4連敗してたんですよ。だから、きょうは絶対勝つんだと必死になってましたね。大体、いずれNPBの球団でプレーしたいと思っている選手ばかりだから。独立リーグといえどもこっちがスキを見せたら嵩(かさ)にかかって攻め込んでくる」
そういう熱いリーグがいま、消滅寸前だというのである。日刊スポーツ(4月23日付)に報じられた村山哲二代表の発言はあまりに衝撃的だった。
「(運営の見通しは)立っていません。プロスポーツは、試合できなければスポンサー料も返還しなければいけない。興行できなければ、ほとんどの球団はなくなると思います」
運営しているリーグ、球団、スポンサー側にはできる限り存続を求めたい。無論、選手にはこれまでのような環境や給料を保証できなくなるだろう。
しかし、BCリーグの給料はもともと非常に安く、野球だけでは食べていけないため、別に仕事を持っている選手がほとんど。彼らはそういう環境にあって、プロのファームを圧倒するほどのプレーを見せてきたのだ。
いまの三宅諒やケビン・クラビーツも、かつての野口みずきさんも、自分の好きなスポーツを続けるためならアルバイトをすることも厭わなかった。果たして野球選手はどうだろうか。さすがに、いまはまだNPBの選手がバイトをしている事態までは想像しにくいが、まずはBCリーグの動向に注目したい。
(文中一部敬称略)
◎参考資料
(インターネット記事)
●note
「三宅諒『明日からバイトを始めます。』(前後編)」4月29・30日配信
●THE ANSWER
「なぜ? 全米ダブルス覇者がアルバイト生活 独紙『スーパーで生計立てる』」4月26日配信
●日刊スポーツ
「BCリーグ存続危機『興行なければ球団なくなる」4月23日配信
●WEDGE Infinity赤坂英一の野球丸
「『いまどこまで懸命に生きるか』巨人三軍選手たちの生き様」2017年7月19日配信
(電子書籍)
●eAERA
『現代の肖像/野口みずき』Kindle版 赤坂英一著(朝日新聞出版)
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