2024年12月6日(金)

赤坂英一の野球丸

2020年4月6日

 新型コロナウイルスの感染拡大がここまできたら、今年のプロ野球は無観客で開幕するしかないのではないか。球場に観客を入れる通常開催を目指し、いつまでも延期に延期を重ねていたら、早晩タイムリミットを超えてレギュラーシーズンそのものの中止へと追い込まれる可能性もある。

(bebecom98/gettyimages)

 3日に行われたNPB(日本野球機構)と12球団代表者との会議は、先に決められていた4月24日の開幕日をさらに延期することを決定。新たな開幕日は今月下旬から来月上旬に決める、としている。が、それが何月何日になるかは、いまも猛威を振るい続ける新型コロナウイルスの情勢次第だ。

 この上、また1カ月も模様眺めをしたあげく、さらに開幕延期となったら、各チームの選手も、開幕を待ち望んでいるファンもうんざりしてしまうだろう。何よりも、12球団でのリーグ戦、交流戦、ポストシーズンゲームを行える日数が決定的に不足する。そのときは、現実問題として、本当にレギュラーシーズンを中止せざるを得なくなるのだ。

 実は、「オープン戦や練習試合のように、公式戦も無観客で開幕できないか」という声は、最初に開幕延期を決議する前から、一部の球団関係者やマスコミ関係者からあがっていた。これについては3月9日付小欄『開幕延期か、無観客試合で断行か、そのプラスマイナス』でも書いた通りである。

 ところが、その9日に行われた12球団代表者会議の直後、斉藤惇コミッショナーは会見で無観客試合の可否について質問されると、「最後の最後の選択。ほとんどあり得ないに近い」と断言。当初、3月20日に予定されていた開幕はいったん4月10日に延期されることに決まった。もちろん、観客を入れての通常開催が前提である。

 しかし、それも難しいとなると、3月23日にまた12球団代表者会議を開き、4月24日に再延期することを決議。同時に、レギュラーシーズン143試合すべてを行うことができるか、ダブルヘッダー導入やCS(クライマックスシリーズ)の試合数削減などが球団同士で検討され始めた。が、冒頭でも述べたように、この4月24日案もまた、3日の12球団評者会議で白紙に戻されている。

 通常開催にこだわる球界関係者は、無観客試合が球団に与える経済的打撃を強調する。

「各球団によって差はあるが、公式戦の入場料収入の粗利は1試合で大体2~3億円。1シーズンのホーム71~72試合ぶんにすると、単純計算で142~216億円に上る。これが全部失われたら、選手の年俸や職員の給料が払えなくなってしまうんだ。

 それでも本当に無観客試合をやれば、今年のシーズンオフはどこの球団もかなりのリストラを断行せざるを得ないだろう。数億、十数億の大型契約を結んでいるスター選手も、契約の見直しを迫られるかもしれない」

 となると、年俸5億7000万円・7年契約のソフトバンク・柳田悠岐、年俸5億円・5年契約の巨人・坂本勇人(どちらも年俸は推定)も安閑としてはいられない。サッカーの世界ではすでにスペイン1部リーグが中断期間中の選手の給与を大幅カットすると公表。バルセロナの主力選手、アルゼンチン代表FWのリオネル・メッシは、クラブの求めた給与70%のカットに同意した上、職員の給料を100%補償するため、自ら寄付することまで明かしている。これは日本のプロ野球にとっても、決して対岸の火事ではない。

 一方、それでも無観客にするべきだと主張する別の球界関係者は、「そもそもたとえ観客を入れてもビジネスとして引き合わないのは同じだ」と指摘する。

 「観客を入れるとなると、密集、密接状態を作らないよう、お客さんの間に一定の距離や空間を作る必要がある。例えば、4人分の席に1人とすると、3万人収容の球場で7500人、4万人で1万人しか入れられない。この程度の入場者数では、興行を打てば打つほど赤字が膨らんでしまう。

 こういうシュミレーションは各球団の営業担当者同士で何度もやった。試合日程の調整も含めて、何試合で何人ぐらいお客さんを集めたら、どれだけ赤字を減らせるだろうかと、いろんな意見や情報を交換し合ってね」

 そういう水面下での球界の企業努力には頭が下がる。さらに、「お客さんを入れて一番の問題となるのはファンに与える感染リスクだ」と、この関係者は続けた。

 「仮に球場のスタンドでお客さん同士の濃厚接触を避けられたとしても、試合後の帰りはどうするのか。一度に1万人前後のお客さんが球場の最寄駅へ向かえば、必然的に密集、密接状態が発生する。

 とくに、西武本拠地のメットライフドームは西武鉄道、阪神本拠地の甲子園は阪神電鉄、DeNAの横浜スタジアムはJRの球場前駅と、お客さんが1カ所に集中するでしょう。そこでひとりでも感染者が出たら、翌日から試合を中止しろ、という声が必ず起こる。政府や自治体からも中止要請が出るかもしれない。そうなったとき、誰が責任を取るのか」


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