元CIA幹部が次々と告白
番組は、後半に至って、元CIAの高官がJFK暗殺の研究者たちのシンポジウムに登場して、CIAの一部の人間の暴発によって、オズワルドを利用しながら暗殺が敢行された、という新たな説が表明された。
CIAのヨーロッパ総局長を務め、長官賞を幾度も受賞した、ロルフ・ラーセンの証言である。内部犯行説を唱える理由について、ラーセンは「真実の探求から逃げれば、この国はなにかを失う」と語る。
ただし、その証拠は残っていないだろう、とラーセンはいう。しかし、JFK暗殺を実行できる力があるのは、CIAしかない、と核心を語っていく。それは、計画能力と、情報収集能力である。「さらに、CIAで働いてみると、クレイジーな人間が多かった」という。
ラーセンによると、暗殺の計画を練り、工作員を動かせるのは、「CASE OFFICER」と呼ばれる上級の役職者のみである。暗殺事件当時、世界で百数十人がいた。そのなかで、オズワルドに関わる、国内局と西半球局のなかから、動機と人間関係から、2人に絞り込んだ、とラーセンは自信をのぞかせる。
西半球局長だった、ジェイク・エスターラインと、暗殺事件の現場だった、ダラス支局長のウォルトン・ムーアだという。ふたりは、第二次世界大戦中に日本軍と戦った同じ部隊に所属していた。
さらに、エスターラインは、失敗に終わったキューバ侵攻の「ピックス湾工作」の責任者だった。JFKの了解を取らずに始めた作戦は、最終段階で大統領による空爆が認められなかったばかりか、JFKはCIAの長官と副長官を更迭し、さらにCIAの解体も視野においていたという。
CIAの情報を当時、大統領に上奏する、重要な役割を担っていたレイ・マクガバンは、ある職員が次のように言っていた、と証言する。
「JFKは共産主義に近い。ソ連のやり方だ。(米国人)1000万人の犠牲がでても、やらなければならない……歪んだ正義感です」
元CIA高官のラーセンは、暗殺事件の最後の仕上げは、工作でよくやる「COVER STORY」つまり、ひとりの仕業にみせかけることでる、という。
貧困のなかで育って、社会に対する敵愾心があり、共産主義に傾倒し、ソ連に亡命までした、オズワルドはそのひとりにぴったりだったのである。
今回の調査の過程で、オズワルドが暗殺事件の数カ月前にあるスピーチの中で、語った言葉が明らかになった。聖書のヨハネの福音書の一節である。
「あなたがたは真実を知り、真実が、あなたがたを自由にする」
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