2024年7月16日(火)

Wedge REPORT

2020年5月27日

コロナ禍でもなかなか光が当たらない

 医療に向きがちな支援体制は、介護事業者に物資不足も引き起こしている。「マスクや防護服といった衛生用品が足りていない介護事業者は多い。ドラッグストアで調達をしているところもあり、品薄で値段が上がっていることから、余計な支出にもなっている」と現状を語る。特に訪問介護事業者は小規模なところが多いため、卸業者から普段大口の仕入れをしていないためにつながりがなく、こうした緊急時に融通してもらうこともできないという。行政からの支援もこぼれがちだ。

 こうした人も物も足りない状況が続く介護事業者だが、在宅医療を受ける患者や高齢者にとって、生活支援をしてくれる介護従事者の存在は不可欠だ。感染症への懸念から利用を減らしている人も多いというが、それも長く続ければ、健康を害してしまう恐れがある。また、交流が減ることによって認知症の進行やうつ病の発症といったことも起きているという。

 介護の仕事は身体接触がほとんどで、訪問となると〝密〟に近い状況となる。感染とは背中合わせでやらないといけない。緊急事態宣言が解除された今でも、この状況は変わらない。「今は介護事業者の使命感でやっているのが現実。ただ、それも限界がきている。医療と同じように光を当てていかなければならない」と結城氏は話す。

 国は、新型コロナに対応する医療機関や介護施設の職員に対し、1人あたり最大20万円の支援金を支給する検討に入った。感染者を受け入れていない医療機関や介護施設、障害福祉施設の職員に慰労金5万円を支給することも考えているという。介護業界へも支援という方向に進んでいる。ただ、こうした支援は一部に過ぎず、人手不足という根本的な課題の解決とはならない。

 当面の解決策として結城氏は「『潜在介護職員雇用促進給付金』といった形で1人 30 万~60 万円の予算措置を講じるべき」と主張する。週2日以上勤務の非常勤介護職員となった人には 30 万円を給付、正規職員には 60 万 円といった措置である。「3か月以上勤務することを条件とし、期間が過ぎたら給付する仕組みといった形が適切であると考えられる」という。介護の職についていない介護資格者は300万人ほどおり、そうした人の活躍を促すのが目的だ。ただ、「介護職についている人の中には、扶養を受けている人も多いので、給付金を受けても扶養が外れないような措置も必要となる」と指摘する。

 コロナ禍でさらに苦しくなった介護業界。それでも、危機を乗り切るためには、必要不可欠な存在である。今こそ介護産業全体の底上げをしてあげなければならないようだ。

  
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