2024年2月25日(日)

Washington Files

2020年6月15日

米軍幹部がいっせいにトランプ批判

 しかし、大統領糾弾の動きはこれだけにとどまらなかった。マチス氏の雑誌寄稿をきっかけに、国防政策を担ってきた他の元政府高官、米軍幹部が堰を切ったように、いっせいにトランプ批判に回る騒ぎとなった。

 まず去る5日、元外交官、退役各軍大将、国家安全保障担当の党派を超えた約280人ものOBたちが、政治・軍事評論ウエブサイト「JustSecurity」に連名で「政治的非介入の米軍の力」と題する以下のような「緊急声明書」を発表した:

 「我々一同は、各国大使、4軍大将、政府当局経験者として、大統領および何人かの政治的リーダーが全米各都市における合法的抗議活動を鎮圧する目的で連邦軍投入を呼びかけたことを驚きをもって受け止めた」

 「大統領一行は平和的集会を行っていた首都ワシントン市街で何機もの軍用ヘリコプターを低空飛行させ、参加者たちを退散させ、重武装の州兵部隊を近くのリンカーン記念堂に配備させたが、これらの行為は全米および世界の市民の目の前で、わが国男女制服組の評判を貶めかねない扇動的行為であり、看過できない」

 「政治目的のための軍濫用は、アメリカン・デモクラシーの構造そのものを弱体化させ、合衆国憲法擁護のために軍務につく兵士たちを誹謗するのみか、世界におけるアメリカの力を損傷させることになる」

 「白人警官の暴行により黒人市民を死亡させた事件をきっかけに抗議デモ、集会を拡大させた社会問題は、軍事力をもってしては対処できず、あくまで政治的プロセスを通じて解決が可能となる。米軍は、憲法が保障する『言論の自由』がたとえ一部の人間にとって不都合なものであったとしても、米国市民によるその権限行使に対処する役割は何ら担っていないことを肝に銘じるべきである」

 さらに翌6日には、レオン・パネッタ、チャック・ヘーゲル、アシュトン・カーター、ウイリアム・コーエン各元国防長官をはじめとする民主、共和両党の著名な元国防総省高官89人がワシントン・ポスト紙に、トランプ大統領の言動を告発する以下のような共同見解を寄稿した:

 「トランプ大統領は今回、全米各都市に広がった抗議行動について言辞をエスカレートさせ、各市長、州知事の了解のあるなしに関わりなく、軍投入というショッキングな約束を公言、実際に首都ワシントン地域に1600人規模の軍隊を配置したほか、軍用ヘリ多数を低空飛行させ、参会者たちを追い散らす強硬手段に出た。さらに、その直後に、エスパー国防長官、ミレー統合参謀本部議長らを徒歩で引き連れ、歴史的宗教施設聖ヨハネ・エピスコパル教会前での政治的フォト・オプ(報道向け撮影)にまで及んだ」

 「過去の歴史を振り返ると、ユリシーズ・グラント、ドワイト・アイゼンハワー、ジョン・F.・ケネディ、リンドン・ジョンソン各大統領が国家的危機の際に秩序回復側面支援のために軍隊出動を命じたことがあった。しかし、それらはすべて、アメリカ市民の諸権利擁護を目的としたものであり、権利蹂躙を目的としたものでは断じてなかった。略奪や暴力は容認できないものの、去る1日、ホワイトハウス付近での市民の行動は概して平和的抗議集会の範囲にとどまっていた」

 「我々一同は、文民、制服出身、民主、共和、無党派のいかんに関わりなく、全員が公職就任に際し合衆国憲法支持・防衛のために宣誓した。しかし、今回大統領が、わが同胞の諸権利蹂躙を目的とした軍隊投入を命じたことはこの誓約に背く行為であり、一様に驚きを禁じ得ない。わが国男女兵士たちを政治的騒動のど真ん中に引き込むことは、わが国デモクラシーの基幹をなす軍の政治非介入の精神を侵犯するのみか、今後何年にもわたり、わが軍に対する国民の信頼引いてはわが国安全保障を減退させる結果となる」

 このように、米軍で責任ある立場にあった多くの軍関係者が一斉に、最高司令官である大統領と袂を分かったことについて、米主要メディアは「米国史上かつてない、極めて異例な事態」と一様に評している。


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