Washington Files

2020年6月15日

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斎藤 彰 (さいとう・あきら)

ジャーナリスト、元読売新聞アメリカ総局長

1966年早稲田大学卒業。68年米カリフォルニア州立大学バークレー校大学院修士課程修了、70年読売新聞入社。ワシントン常駐特派員を2度務めた後、アメリカ総局長、東京本社取締役調査研究本部長などを歴任。近著に『中国VSアメリカ』『アメリカはカムバックする!』(いずれもウェッジ)がある。

投票動向にも少なからぬ影響を及ぼす

 アメリカでは伝統的に、軍隊に対する国民の信頼は、あらゆる組織・機関の中で最も高い評価を受けてきたことで知られる。

 米ギャラップ社が1973年以来、実施してきた国内の政府、議会、裁判所、教会、メディアなどを含めた組織・機関を対象とした国民の「信頼度調査」によると、毎年、軍隊が断然トップを維持してきており、昨年の場合も、74%ときわめて高い支持率だった。そして、軍を支持する最大の理由として「勇敢で規律が守られている」ことが挙げられている。つまり、党派で揺れ動く政治家の恣意的行動から超越した存在であるがゆえに国民の尊敬を勝ち取ってきたことを示している。

 それだけに今回、退役したそうそうたる軍トップのほとんどが、大統領を言下に厳しく説諭したことは、11月大統領選挙を前に、全米130万人の兵士およびその軍属のみならず、多くの有権者の投票動向にも少なからぬ影響を及ぼすことは避けられない。

 またこれに追い打ちをかけるように、ミリー統合参謀本部議長までが11日になって、首都ワシントンの国防大学卒業式での動画メッセージを通じ、1日の大統領主導による”暴動鎮圧ショー”に加担したことについて「自分があの瞬間、あのような場所にいたことで、軍の国内政治への関与という印象をあたえてしまった。間違っていた」と自らの非を認め、一時辞任に傾いたとも報じられた。

 一方、エスパー長官についても、トランプ氏による「即刻解任」は免れたものの、本人自身、一時、辞表提出を準備していたといわれるだけに、年内遠からず、辞任に追い込まれるとの観測も依然くすぶっている。

 米国民が最も信頼を寄せる巨大組織米軍と大統領との断絶は、修復不可能な段階にまで達しつつある。            

  
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