「観客がいないことによるストレス」
しかし、先の某セ球団OBは「彼らが結果を出せなかった裏側には、こういう状況ならではの共通の理由もあるかもしれません」と指摘する。それは「観客がいないことによるストレス」だというのだ。
「お客さんがいれば、ファーストストライクを取っただけで拍手が起こる。ピンチになっても声援が送られるでしょう。これから一軍に食い込んでいきたい若手にとっては、それが何よりの活力になるんです。
その半面、若手は常にベンチとも戦わなければならない。戦う相手は監督やコーチの目です。大事な場面になればなるほど、ここで打たれちゃいけない、こんなところで四球を出したりできない、下手をしたら二軍に落とされる、というプレッシャーがかかってくる。
そんな精神的重圧を受けているとき、若手を鼓舞してくれるのがお客さんなんです。僕の現役時代もそうでしたが、やっぱりファンあってのプロ野球選手なんですよね」
シーズン本番の試合になれば、選手に勝負どころでかかるプレッシャー、ベンチやロッカーでのストレスも練習試合の比ではない。「今度はメンタルだけではなくフィジカルの心配、つまりケガをさせないよう、十分注意する必要があります」と別の球団のファーム関係者はこう言った。
「今年は3カ月開幕が遅れて、自粛期間中はチーム全体での練習も満足にできなかった。キャンプ、オープン戦を経て、間を置かずに開幕を迎えていた例年と比べて、選手たちのコンディションは明らかに落ちています。
とくに30歳前後、それ以上の年齢の野手の場合、守備や走塁などで自分のイメージ通りに身体が動かない、動けたつもりでも実際はそういうプレーができていない、ということが起こってくる。指導者やトレーナーは普段からそういうところをきちんと見極めておかないと、今年は変なケガをする選手が増えるんじゃないかという気がする」
そういう意味では、陽性反応のためにほとんど練習試合に出られなかった巨人・坂本、大城は要注意だろう。何とか無観客の時期を無事にしのいで、ファンが球場に詰めかける日が早く戻ってくることを切に願う。
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