赤坂英一の野球丸

2020年6月17日

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 いよいよと言うか、やっとと言うか、2020年のプロ野球が今週金曜から開幕する。球界もマスコミもまずはホッと一息というところだが、本当に気を引き締めていかなければならないのはこれからだ。

 新型コロナウイルス感染拡大防止のため、当初はこれまでの練習試合と同様、無観客で試合が開催される。この状況で滞りなく公式戦が行われる態勢が整えば、NPBと12球団は早くて7月10日から段階的に観客を球場に入れる方針。そのためにも、たとえひとりでも感染者を出すわけにはいかない。

(MagentaToolbox/gettyimages)

 われわれ報道陣の取材方法も、コロナ前とはすっかり様変わりしている。東京ドーム、横浜スタジアムなど、私が練習試合の取材で訪ねた関東首都圏の球場では、入場する際のマスク着用をはじめ、厳重な体調のチェックが義務づけられた。

 サーモカメラによる検温を受けると、その体温をはじめ、咳、くしゃみ、倦怠感、嗅覚や味覚の有無などを所定の記録表に記入して提出。東京ドームのような室内球場では入場と退出の時刻、滞在時間も書く必要がある。

 また、球場に来るまでの交通手段と経路、公共交通機関を利用した場合はその混雑状況を記入する欄まである。そうした行動履歴を含めたチェックシートは球場受付で提出するだけでなく、われわれの健康管理に役立てるため、同じものを作って保管しておくようにと球団側に勧められている。

 球場内部で3密状態が生じることを避けるべく、球場に入れる記者やカメラマンの人数も大幅に制限されるようになった。記者席も隣り合って座るわけにはいかず、東京ドームのネット裏の記者席では、必ず2~3人ぶんスペースを空けなければならない。

 横浜スタジアムや神宮球場では、観客席の一部を報道陣に割り当て、十分距離を置いて座るよう呼びかけている。天気がいい日は、スタンドでのデーゲーム観戦はなかなか快適だと感じる半面、早くここにファンを戻してあげたいという思いがよぎったりもした。

 最も変わったのは、監督、選手、コーチの試合前、試合後の囲み取材である。コロナ前のように大勢の報道陣が取材対象の周りを囲むわけにはいかないので、運動記者クラブ加盟社による代表取材、もしくは一般企業のリモート会議のようにオンラインで行われるようになった。

 オンライン取材で使用されているのはZoomやMicrosoft Teamなどの会議用アプリ。取材するこちら側はカメラをオンにして社名、氏名、顔などが相手にわかるようにしておき、順番に質問を重ねていく。

 これは最初のうち、するほうもされるほうも少々戸惑っていたようだ。が、最近はどちらもすっかり慣れ、私が参加した囲みでは概ねスムーズに質疑応答が行われていた。

 ときには巨人・岡本和真が「最近は手洗いがうまくなりました」とコメントしたり、DeNAのアレックス・ラミレス監督が久々に「ゲッツ!」をやって見せたり。オンラインならではのリラックスした雰囲気も漂うようになっている。

 ただ、そういう自分は、実はいまだに要領がつかめていない。質問しないときにマイクをミュートにするのを忘れていたり、カメラをオンにしていないために相手に自分の顔が見えなかったり、囲みが終わっても退出する方法がわからなかったりと、しょっちゅうまごまごしているのが実情だ。

 チーム内での感染防止対策も様々である。坂本勇人、大城卓三と抗体検査でふたり陽性反応が出た巨人では、原辰徳監督以下全首脳陣、全選手に対してPCR検査を実施。幸いにも全員が陰性だったため、試合中はベンチでも通常通りマスクをつけず、それほど距離を置かない状態で試合に臨んでいた。

 一方、DeNAは試合中もラミレス監督以下、首脳陣とスタッフが全員マスクを着用。本拠地・横浜スタジアムでは一塁側ベンチの所々に×マークを貼って座ることを禁じ、試合中も選手同士が距離を置くよう奨励している。

 ベンチ内の密度が高くなる攻撃中は、当分打順の回ってこない選手がファウル・グラウンドにせり出したエキサイティングシートに移動。ここでもマスクをつけ、互いに距離を取って着席するという徹底ぶりだ。

 時節柄、常に感染防止に気を使わなければならないのは当然ではある。が、このような特殊な状況に置かれているため、選手たちには独特のストレスも生じているらしい。

 指導者経験の長い某セ・リーグ球団OBは、教え子の若手とLINEや電話で連絡を取ると、なかなかプレーだけに集中できない精神状態にあることを感じるという。

 「ただでさえ狭苦しいロッカーやベンチで、実績のある大先輩と一緒にいると、まだ若い後輩はいろいろと気を使うものです。それに加えて、いまはちょっとした咳やくしゃみもできないでしょう。大声で喜んだり悔しがったりすることはもちろん、ベチャクチャ雑談をしたり、冗談を言い合って笑うことさえもはばかられる。

 実際、『いまは何か(先輩の)○○さんと目を合わせるのもためらっちゃう。(精神的に)キツいっすよ』ともらす若手もいます。『ベンチやロッカーで普通に静かにしていても、不意に息が詰まりそうになる』って」

 このOBの指摘には、緊急事態宣言解除後、在宅勤務から会社勤務に復帰した一般企業のサラリーマンにもうなずけるものがあるはずだ。一見、気にしなければ済むことのようでも、そんなストレスがひとつひとつ積み重なっていけば、試合中のプレーに与える影響は決して小さくない。

 例えば、私が取材した練習試合では投手が制球を乱し、四球や失点を重ねるケースが目についた。4日のDeNA-楽天戦に先発した新人・坂本裕哉が2回1安打5四球1失点、楽天先発・辛島航が3回6安打2四球6失点。10日の巨人-DeNA戦も巨人先発・鍬原拓也が3回5安打5四死球6失点、DeNA先発・中川虎大(こお)が2回2安打5四球2失点。

 12年目の辛島を除くと、いずれもキャリアが浅く、開幕前に首脳陣にアピールしなければならない立場にあった。コントロールが安定しなかった技術的な原因は、それぞれに異なったものがあるのだろう。

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