Washington Files

2020年6月22日

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斎藤 彰 (さいとう・あきら)

ジャーナリスト、元読売新聞アメリカ総局長

1966年早稲田大学卒業。68年米カリフォルニア州立大学バークレー校大学院修士課程修了、70年読売新聞入社。ワシントン常駐特派員を2度務めた後、アメリカ総局長、東京本社取締役調査研究本部長などを歴任。近著に『中国VSアメリカ』『アメリカはカムバックする!』(いずれもウェッジ)がある。

ロシアによる選挙介入を促す“誘い水”

 今年11月の大統領選でも、バイデン民主党候補に水をあけられたトランプ氏が劣勢挽回のため、ロシアによる選挙介入を促す“誘い水”とも疑われる動きを見せている。

 そのひとつは、新START(戦略兵器削減交渉)に対するトランプ大統領の取り組み姿勢の変化だ。

 大統領は今年初め以来、来年2月に期限切れを迎える新STARTについて、延長せずそのまま失効させる意向を繰り返し示してきた。これに対し、ロシア側は同条約に「5年間延長」規定が含まれていることを盾に、重ねて延長を主張、「5年間に米側が反対なら短期間の延長でも構わない」として米側にオリーブの枝を差し伸べてきた。

 ところが、大統領選まであと5カ月を残すのみとなった先月、ホワイトハウスは突然、従来姿勢から転換、ロバート・オブライエン大統領補佐官(国家全保障担当)がテレビ番組で「同条約の延長問題について誠実に交渉していく用意がある。大統領も条約を重視している」として一転、対ロ譲歩の姿勢を見せた。

 さらに大統領は去る5月30日、ホワイトハウス記者団に対し、6月に予定されていたワシントンにおけるG7サミットの延期を突然発表するとともに、「G7は旧弊化し新時代にそぐわない」としてロシアなどを新たに加えた体制に組み替えるべきだとの見解を述べた。これも、対ロ融和のシグナルの一つと解釈されている。

 トランプ氏は2017年、18年、19年のG7サミットの際にも、ロシアを加えた「G8」への編成替えを繰り返し提案してきたが、イギリス、ドイツ、フランス、カナダなどの反対を受け断念した経緯がある。

 トランプ氏が今回ロシアを加える拡大サミットを改めて提案したことについて、日本を除く他の参加国の反対姿勢は変わっておらず、9月に予定されるワシントン・サミットへのロシア参加が実現する可能性は少ない。

 しかし、トランプ氏が2016年大統領選以来、一貫してG7へのロシア参加を呼び掛けてきたことで、プーチン大統領が負い目を感じているとしても不思議はない。

 KGB出身で秘密工作に曉通したプーチン氏がこれに応え、再び米大統領選介入に乗り出す公算は依然大きく、米情報機関は一層警戒感を強めている。

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