Washington Files

2020年6月22日

»著者プロフィール
著者
閉じる

斎藤 彰 (さいとう・あきら)

ジャーナリスト、元読売新聞アメリカ総局長

1966年早稲田大学卒業。68年米カリフォルニア州立大学バークレー校大学院修士課程修了、70年読売新聞入社。ワシントン常駐特派員を2度務めた後、アメリカ総局長、東京本社取締役調査研究本部長などを歴任。近著に『中国VSアメリカ』『アメリカはカムバックする!』(いずれもウェッジ)がある。

「アンチ・チャイナ」を選挙戦のスローガンに

 問題は、中国だ。

 中国が過去の米大統領選に具体的にどのように介入したかについては、これまでのところ米メディアでも詳細な報道はなされていない。米インテリジェンス当局は「2016年、2018年の米国選挙に中国側のハッカーたちが攻撃を仕掛けたことは事実であり、今回も11月投票日に向けて、彼らが米国の政治的ターゲットに対し、フィッシングなどの策を講じてきている」と指摘する程度にとどまっている。

 いずれにしても、今回大統領選については、中国情報機関は前回以上に大きな関心を寄せていることだけは確かだ。

 その理由は、とくに、トランプ大統領がコロナ危機発生以来、選挙戦での劣勢挽回の切り札として、中国をやり玉にあげ、「アンチ・チャイナ」を選挙戦のスローガンとして前面に打ち出し始めており、対抗上、バイデン民主党候補も中国に対し厳しい姿勢を取り始めているからだ。

 トランプ氏自身、最近になって、本格的な地方遊説に乗り出し始めたが、バイデン攻撃の際に必ず「中国に対する弱腰姿勢」に触れることが通例のようになっている。

 こうしたことから、アメリカ主要メディアの間では、11月投票日に向けて、中国情報機関があらゆる手段を講じて、「トランプ再選阻止」のために動き始めるのではないかとの見方が有力となってきている。

 そして、ロシアがプーチン大統領指揮の下、2016年大統領選でクリントン候補の当選を阻むため、SNSを駆使して同候補に関する大量の虚偽情報を拡散させたのと同様に、中国情報機関が今回、トランプ氏を非難・中傷する虚偽情報をツイッターなどで流布させる作戦に出るのではないかとの観測も高まっている。

 トランプ大統領自身、去る4月30日、ロイター通信とのインタビューで「中国は私を敗北させ、バイデンを当選させるためにあらゆることをするだろう」と警告していた。

 しかし、全く逆の見方もある。中国は実際は、トランプ再選に期待しているというのだ。

 これを裏付けるいくつかの理由がある。

 ひとつは、習近平国家主席自身の意向だ。

 同主席は、2018年12月、ブエノスアイレスで開催された中国も含めたG10サミットに出席した際、トランプ大統領との夕食会で用意されたメモ書きを下に「私はあなたとあと6年間は一緒に仕事をしたいと思っている」と語ったことが、近く発刊予定のジョン・ボルトン元大統領補佐官による暴露本の中で明かされている。「あと6年」が、再選を前提とした2期目の4年を含めた在任期間を意味していることは明らかだ。

 これを受け、大統領は「多くの人が、大統領任期は2期だけに限定されているのも問題であり、憲法規定を撤廃すべきだと言っている」と応答、すかざす習近平氏も「アメリカは選挙が多すぎる。私は(次期大統領が)あなた以外の人になることを欲していない」と相槌を打ったという。

 その後、習近平主席のみならず、他の中国政府関係者も西側メディアに対し、これと歩調を合わせるかのように、中国側がトランプ再選を望んでいることを示唆する発言を行ってきた。

関連記事

新着記事

»もっと見る