Washington Files

2020年6月25日

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斎藤 彰 (さいとう・あきら)

ジャーナリスト、元読売新聞アメリカ総局長

1966年早稲田大学卒業。68年米カリフォルニア州立大学バークレー校大学院修士課程修了、70年読売新聞入社。ワシントン常駐特派員を2度務めた後、アメリカ総局長、東京本社取締役調査研究本部長などを歴任。近著に『中国VSアメリカ』『アメリカはカムバックする!』(いずれもウェッジ)がある。

トランプがコロナ感染に神経をとがらせる理由

 再選をめざすトランプ政権がコロナ感染拡大にとくに神経をとがせるのは、以下のような理由からだ:

  1. トランプ大統領自身、去る2月、コロナウイルスが中国から欧州を経て最初に米国に拡大し始めた当初から、「暖かい春になれば収まる」「ニューヨーク、ロサンゼルスなどの大都市だけの問題であり、全国には広がらない」などと楽観論に終始し、感染拡大防止の積極的措置をとらなかった。その結果として今日、感染者数、死者ともに世界最悪の記録更新を続ける事態となり、その責任を問う声が“ブルー・ステーツ”のみならず、”レッド・ステーツ”にまで徐々に広がりつつある。
  2. 第二次コロナウイルス感染拡大の恐れが高まってきたことで、全米各地における消費者マインドが委縮、経済全体に占める顕著な需要喚起が期待薄となりつつある。アメリカ経済の「順調な成長と発展」を売り物としてきた大統領としては、手ごわいライバルであるバイデン候補相手に‟最強の武器“を失いつつある。
  3. 最新の各世論調査結果を見ると、トランプ氏は、前回選挙で僅差で勝利を収め、今回も接戦が予想されるミシガン、ウイスコンシン、ペンシルバニア3州のいずれにおいても、バイデン候補に8~10%差でリードを許しているほか、今回選挙の序盤まで、楽勝とみられていたテキサス、フロリダ、アイオワ各州でもバイデン氏の猛追を受け、接戦も伝えられている。もし、テキサスなど南部諸州でも逆転を許すことになれば、「歴史的大敗」も覚悟しなければならない。
  4. しかも、テキサスなどを含む共和党の伝統的地盤である南部諸州においても、コロナウイルス感染が拡大し始めたことで、共和党員の投票動向にも微妙な影響を及ぼす懸念も出てきた。げんに、去る20日、収容人員1万9000人を誇るオクラホマの大規模集会施設で行われたトランプ氏演説会は、ふたを開けてみると、半数にも満たない6500人程度(市消防当局)にとどまった。ホワイトハウス側は当初、超満員を予想し、あふれる支持者のために屋外にビデオ中継するためのスペースまで確保していたが、実際には数人程度しかおらず、予定されていた大統領のメーン会場に続く2度目のスピーチもキャンセルとなる始末だった。参加者が当初予想を大きく下回った原因として、参加予定者の多くが、大勢が詰めかける会場内でのウイルス感染を警戒したことが挙げられている。米マスコミはウイルス感染が、政治集会などの選挙戦にまで影響を及ぼし始めた具体的実例として、大きな関心を示している。

 大統領はその後も機会あるごとに、劣勢挽回のために、「経済活動の早期再始動」を各州知事に執拗に呼びかけ続けている。しかし、それに真っ向から水をさすかのように、ウイルス感染がなお猛威を振るい始めている。

 政府感染予防対策の最高性責任者であるアンソニー・ファウチ国立感染症アレルギー研究所長は23日、米下院公聴会で証言し、大統領が先週、フォックス・ニュース会見番組で「ワクチン開発を待たずとも、コロナウイルスは次第に消滅していく」と語ったことを批判するとともに、「今秋にかけて重大な局面を迎えるだろう」と警告した。

 トランプ氏にとっては、11月3日の投票日まで残す時間がなくなりつつあるだけに、コロナウイルス感染の第二次感染拡大だけはなんとしても回避した上で選挙に臨むべく、祈るような心境だろう。

  
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