2024年11月22日(金)

Washington Files

2020年6月25日

 コロナ禍を軽視してきたトランプ大統領の熱烈支持州とされる南部諸州で、記録的な感染者増が軒並み報告され、ホワイトハウスが神経をとがらせている。

(Timothy Baker/gettyimages)

 米ABCテレビが23日、報じたところによると、1日当たりの新たなコロナウイルス感染者数が去る17日以来、フロリダ、テキサス、ユタ、サウスカロライナ、ネバダ、ジョージア、ミズーリ、モンタナ、アリゾナ、カリフォルニア、テネシー、オクラホマの12州でそれぞれ過去最多を記録したことが明らかになった。

 このうち、カリフォルニア州以外の11州は、トランプ氏が2016年大統領選で勝利しており、今回選挙でも再選のためには何とか押さえておきたい州ばかりだ。

 中でも選挙人29人を擁するフロリダ州は、トランプ氏に、とって最重要州のひとつだが、17、18、19の3日連続で1日当たり4000人を突破する記録更新が続き、20日も、4049人もの感染者が報告された。

 選挙人38人のテキサス州も23日、新たに5000人を超す感染者増となり、グレッグ・アボット共和党州知事は同日急遽、全州民向けに「外出自粛」勧告を行う騒ぎとなった。

 さらに、大統領が去る20日、医療専門家たちの警告を無視するかたちでコロナ危機発生以来の初の大規模演説集会開催に踏み切ったオクラホマ州でも、その翌日には、478人の感染者が報告され、最多記録となった。

 このほか、トランプ氏が最近まで、バイデン民主党候補相手に有利な戦いを進めてきたアラスカ、アラバマ、アーカンソー、フロリダ、ジョージア、モンタナ、ノースカロライナ、オクラホマ、サウスカロライナ、サウスダコタ、テネシー、テキサス、ユタなど、共和党寄りの“レッド・ステーツ”各州で、新たなコロナウイルス感染による入院患者数が軒並み増加しつつあるという。

 米国内でのコロナウイルス感染は当初、ニューヨーク、カリフォルニア、マサチューセッツなど多くの人口を抱える民主党寄りの‟ブルー・ステーツ”中心に拡大し始める一方、上記の南部諸州は目立った感染報告もなく、共和党州知事たちも州民たちに対し、マスク着用、外出自粛などの感染防止のための注意喚起をほとんどしてこなかった。連邦政府が全州を対象として「自宅退避」勧告を出した4月当初も、南部諸州の多くがこれを無視してきた。

 ところが最近になって一転して、感染拡大が“ブルー・ステーツ”から‟レッド・ステーツ”へと移動してきたことが明白となった。

 トランプ・ホワイトハウスは南部諸州でこうした新たな局面を迎えたことについて、「感染件数の増加は、各州が積極的に感染有無の検査を実施した結果であり、新たなウイルス感染拡大を意味するものではない」との苦しい説明に終始している。大統領自身もこの点に関連し、オクラホマ大演説会場で聴衆を前に、感染者数の数字だけが一人歩きしているとして「(感染予防当局者たちに)検査実施のペースを落とすよう指示した」と語り、大きな波紋を広げるかたちとなった。

 これに対し、連邦政府、および各州の医療関係従事者たちは、「南部諸州における最近の深刻な事態は、検査実施件数だけを反映したものではない。その証拠に、入院患者数が急増してきており、明らかに感染拡大が始まっている」として、一斉にホワイトハウス側の説明を否定している。

 一方、ホワイトハウスのペーター・ナバロ通商・製造業政策局長は21日、テレビ会見番組で、「トランプ政権としては今秋、第二次コロナ感染拡大に備え、必要な医療器具、防護服などの備蓄にとりかかっている」と語り、「感染は収束に向かっている」とするこれまでの大統領自身の希望的観測を事実上、打ち消すとともに、直近の感染拡大がたんなる検査件数の増加を反映したものではないことを認める結果となった。

 最新の全米感染状況を見ても、収束に向かいつつある兆候はどこにも見当たらない。

 たとえば、ニューヨーク・タイムズ紙が22日までにまとめた各州都市ごとの1日当たりの新たな感染者数データによると、テキサス州パレスティン市921人、ミズーリ州ジョプリン市454人、テネシー州セバービル市310人、サウスカロライナ州マートルビーチ市1512人、アイオワ州エイムズ市321人、ウイスコンシン州ラクロス市191人などとなっており、いずれも前週比2桁増となっている。

 ニューヨーク、シカゴ、ロサンゼルスなど大都市を含めた50州全体の最新の感染者数も1日当たり3万人超となり、数週間前までの2万人程度からさらに増えた。ただ、1日当たりの死者数は4月ピーク時の2000人から最近は600人程度に落ち着いてきているという。


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