2024年12月3日(火)

赤坂英一の野球丸

2020年7月1日

中﨑と今村の存在

 そこで注目したいのが中継ぎの中﨑翔太(27)、今村猛(29)の存在。このふたりがかつて、セットアッパーやクローザーとして〝勝利の方程式〟の一翼を担ったことはまだ記憶に新しい。そんな彼らを、佐々岡監督は今季、リードを許している展開でも投入し、「劣勢の中で流れを引き寄せる」という新たな役割を与えているのだ。

 開幕連勝した20日のDeNA戦では、この佐々岡流の起用法がハマった。2-3と2点ビハインドだった六回、佐々岡監督が今村を今季初登板させると、今村は1四球無失点でしのぐ。直後の七回、広島が西川龍馬(25)のタイムリーで2-3と1点差に追い上げたところで、今度は中﨑を今季初のマウンドに送った。

 中﨑は緒方孝市前監督(51)時代、抑え兼中継ぎのリリーフエースとして2016~18年の3連覇に貢献。昨年まで通算8年間で354試合に登板し、18勝27敗115セーブ66ホールドという好成績を残している。

 さすがに長年の勤続疲労が溜まっていたのか、昨季は6月に調子を崩して戦列を離れ、シーズンオフに軸足の右膝半月板の部分除去手術を受けた。その手術後、初めての公式戦とあって注目されたこの日のDeNA戦、中﨑はいきなり先頭からの2連続四球などで1死二・三塁とされる。

 しかし、ここからソトを遊ゴロ、佐野を見逃し三振に打ち取って無失点。こうして中﨑がピンチをしのいだ直後の八回、カープ打線が大爆発、鈴木誠也(25)の満塁本塁打などで一挙7得点挙げ、見事逆転に成功したのだ。

 試合後、佐々岡監督はこの場面をこう振り返っている。

 「ビハインドでも、ああいう経験のある2人(今村と中﨑)を使えたことが大きい。中﨑は自分(の四球)でピンチを作ったが、そのあとをしっかり抑えられた。あれが(試合の)流れを呼んだと思う。調子が上がってくれば、もっといいところで投げてもらう。そうなったら心強い」

 3連覇中の功労者だった今村、中﨑に奮起を促したい佐々岡監督の心情が伝わってくるセリフだ。彼らの再起を願っているからこそ、あえて厳しい場面で登板させたのだろう。

 佐々岡監督は二軍から一軍の投手コーチに昇格した昨年、投手陣に徹底的な競争原理を導入した。「極端なことを言えば全員が先発ローテーションの柱を目指すというぐらいの意識を持って取り組んでほしい」と、投手陣に改めて言い聞かせたという。

 緒方前監督時代、畝龍実前投手コーチ(56・現三軍統括コーチ)は、先発とブルペンのそれぞれにキャプテンを置いていた。15年は先発・前田健太(32・現MLBツインズ)、ブルペン・永川勝浩(40・現二軍投手コーチ)。16年は先発・福井優也(32・現楽天)、ブルペン・中﨑。17年は先発・野村祐輔(31)、ブルペン・今村。18年は先発・大瀬良大地(29)、ブルペン・一岡竜司(29)である。

 当時は、このキャプテンを中心とした投手陣の結束力が、3連覇の原動力のひとつにもなったのだ。が、キャプテンを担った投手が調子を崩すことも増え、この態勢がマンネリ化しつつあったことも確かである。

 そこで、19年から一軍投手陣に関する全権を任された佐々岡コーチは、「プロはお互いにライバル同士。全員が競争して一軍の居場所を掴み取るべき」というプロの原点に回帰。右ふくらはぎを痛めた先発の柱・野村を9年目で初めて開幕一軍メンバーから外すなど、徹底した実力至上主義を打ち出した。野村も完治後に一軍復帰を約束されているわけではなく、這い上がるには二軍の若手との競争に勝たなければならないという。

 佐々岡監督が期待する今村、中﨑もDeNA戦のあとで失点しており、勝ちパターンの中継ぎに復帰するのは容易ではない。こうした新体制の中から、誰が新たな主力となり、誰がかつての輝きを取り戻すのか。令和時代の若ゴイたちのサバイバルレースをしっかり見守っていきたい。

  
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