今年から佐々岡真司新監督(52)が率いる広島はいったい、強いのか、弱いのか。ペナントを奪回できるのか、少なくとも優勝争いに食い込めるのか。
開幕3カードのDeNA戦、巨人戦、中日戦の9試合で早くも〝新生カープ〟のポイントがはっきりしたように思う。現時点での最大の課題は、新たな抑え投手を固定できるか、その最後の1イニングへつなぐ〝勝利の方程式〟を確立できるか、だろう。
開幕時のクローザーはとりあえず新外国人テイラー・スコット(28)でスタートした。日本プロ野球初のアフリカ大陸出身(南アフリカ共和国ヨハネスブルグ市)の選手として注目され、練習試合では3試合に登板して無安打無失点と状態のよさをアピール。来日1年目にして開幕から抑えに固定されるのは、広島では2011年のデニス・サファテ(39・現ソフトバンク)以来である。
当初、クローザーの最有力候補は来日3年目で、それなりの実績と経験のあるヘロニモ・フランスア(26)だった。が、5月の紅白戦やシート打撃で打ち込まれ、練習試合でも登板した4試合中2試合で失点を重ね、あえなく失格。
もうひとりの候補、ボリュームあるヒゲが特長の新外国人DJ・ジャクソン(30)は一応、練習試合の登板4試合で無失点と、スコットにも負けない結果を残した。にもかかわらず、佐々岡監督がDJを一軍登録から外したのは、外国人枠との兼ね合いによるものだ。
これには少々説明が必要だろう。一軍の外国人枠は従来、上限4人とされていた。これが今年に限り、コロナ禍による特例で5人の登録が可能になっている(ベンチ入りは従来通り4人まで)。ただし、「投手3+野手2」「投手2+野手3」の組み合わせなら自由に入れ替えができるのだが、「投手4+野手1」「投手1+野手4」というパターンを一度でも使ったら、それ以後「2+3」に変更することはできない。
広島では、外国人野手は5年目のアレハンドロ・メヒア(27)と新加入のホセ・ピレラ(30)の2人が先にレギュラーを確定させていた。外国人投手は6年目の先発左腕クリス・ジョンソン(35)がおり、抑えのスコット、中継ぎのフランスアが加わると、全員で上限の5人に達するため、DJを一軍に残せる余地がなくなったのだ。
そうした状況の中、スコットが新守護神として結果を出していれば問題はなかったが、案に相違して出足からつまずいてしまった。公式戦初登板は6月20日、DeNAとの第2戦の最終回。10-4と6点をリードしてセーブ・シチュエーション(セーブが記録される3点差以内)でなかったことがメンタルに影響したのか、先頭の梶谷隆幸(31)にヒットを許すと、2年連続本塁打王のネフタリ・ソト(31)にタイムリーを打たれて来日初失点である。
明くる日の開幕3戦目、スコットはさらに最悪の形で大炎上する。1-0と最少リードで登板した九回、立ち上がりから球が高めに浮き、ソト、佐野恵太(25)、ホセ・ロペス(36)に単打を連ねられて、あっという間に無死満塁とされると、宮﨑敏郎(31)に2点タイムリー。アウト1つも取れず、まさかの逆転サヨナラ負けで、初セーブよりも先に初黒星がついてしまったのだ。
おかげで、チームの開幕3連勝も、この日初登板初先発だったドラフト1位新人・森下暢仁(22)の7回無失点投球とプロ初勝利もすべて帳消し。スコットの防御率はこの時点で27.00にまで跳ね上がった。
この体たらくでは、佐々岡監督も使い方を再考せざるを得なかったのだろう。表向き、「まだ開幕2試合目だから。これからもスコットを抑えで使っていく」とかばいながら、次の巨人戦では微妙に起用法が変わった。
スコット3試合目の登板となった24日は、5-1とセーブ・シチュエーションではない4点をリードした九回に投入。25日は5-5の同点で、今季限定の特別ルールで打ち切りとなる延長十回に登板させている。ただし、スコットは2試合ともにヒットや四球で走者を出しており、依然として抑えとしての適性には疑問符が付く状態だ。
佐々岡監督は2015年から二軍、昨年は一軍の投手コーチを計5年間務めており、投手陣の力と個性なら十分把握している。それだけに、スコットの状態を見極めながら、第2、第3の守護神候補を考えているに違いない。