2024年4月25日(木)

子ども・家庭・学校 貧困連鎖社会

2012年6月27日

 飛田遊郭でセックスワーカーとして働く母親を持つ子、母親が覚せい剤の売人で顧客リストを持たされていた子どもたちもセンターに通って来た。10数年前に前島さんが育てた子たちが、17歳で子どもを産み、その子も16歳で母親になった。30代のおばあちゃんだ。すでに3人の孫がいる。こういう子どもや母親を前島さんや「こどもの里」の荘保さんたちは支えてきた。 

 なぜ、これほどしんどい仕事をするのか聞くと、前島さんは「地域の次のリーダーを育てたい。そんな若者が育てばこの地域の未来は明るい」と話す。しかし、現実は本当に厳しい。

子どもたちの「居場所」としての役割

山王こどもセンターでは、運動会やサマーキャンプなど、様々なプログラムが用意されている。 (提供:山王こどもセンター)

 こういう家庭の状況では、子どもたちに自由に勉強できる環境はない。そこで、20年前から「山王こどもセンター」では毎週一日、夜に「べんきょう会」というプログラムを作って子どもたちが学習に集中できる場をつくってきた。「こどもの里」でも毎日、子どもたちの宿題を見ている。

 不登校の子どもやアルバイトなどで働く高校生たちも来ているが、その子たちが話したり、生活や家族の問題の相談をしたりすることができる「居場所」としての役割も果たしている。

 かつて通っていた子どもは大きくなっていったが、中には犯罪に関係し、逮捕された子もいる。高校を卒業して、生活保護を抜け出そうと頑張って、いくつも入社試験を受けたが、すべて落ちた若者もいる。住んでいるのは西成の愛隣地区、暮らしは生保、しかも母子家庭となれば、こういう若者たちが貧困の中から抜け出ていくのは簡単ではない。

 社会の差別のまなざしはそんな子どもたちに配慮なく降りそそぐ。「子どもの家」はそんな子どもや若者や親たちを家族のように応援してきた。

子どもの貧困は家族の貧困

 大阪の「子どもの家」事業の廃止をめぐる現地の実状を見てきたが、子どもの貧困とは子どもを守り、養育する家族の貧困でもある。養育できない親たちの状況を聞き取りしていくと多くの親たちもまた厳しい環境の中で子ども期を過ごしていた。そんな子どもと母親が「子どもの家」にいた。

若いひとり親世帯の深刻な貧困

 満20歳未満の子どもを養育している母子世帯の困難さが目立つが、とりわけ深刻なのは若い「ひとり親世帯」である。我が国の母子世帯数は151万7千世帯(2006年)で1983年から10数年で80万世帯増え、倍化した。(父子世帯は17万3千世帯、2003年)


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