インド経済を読む

2020年7月22日

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野瀬大樹 (のせ・ひろき)

公認会計士・税理士

大手監査法人にて、株式公開支援業務・法定監査業務・内部統制構築業務などに関わったのちに独立し、野瀬公認会計士事務所を設立。インドのニューデリーに、日本企業のインド進出を支援するNAC Nose India Pvt. Ltd.を設立し、代表に就任。日本インドの双方より、日系企業へのコンサルティング業務を行っている。近著に『お金儲けは「インド式」に学べ!』(ビジネス社)がある。

[著書]

一般的なインド人の「中国観」

 一般的にインド人は「反中国」と見なされることが多い。インドと同様中国との国境問題を抱えている日本では期待も込めてそう考える人が多い。

 しかし実際に冒頭でもお伝えしたように、中国製品の破壊パフォーマンスなどがネット上では散見されるのだが、不思議なことに私はそう言ったゴリゴリの「反中国」の姿勢をインドにおいてあまり見たことがない。

 街には「中国語を習おう」とい看板が至るところにあるし、OPPOやXiaomiの中華スマホはその低価格戦略がインドで人気で、その市場シェアは7割を超えたとも言われている。

 このあたりの疑問を昔インド人の複数の経営者にぶつけたことがある。すると彼らは、

 「中国人であろうが、アメリカ人であろうが、日本人であろうが、俺を儲けさせてくれる人は皆大好きだ。あえて『嫌い』な国と言われたらパキスタン1国だけ」

 と笑いながら答えていた。

 同じ疑問を先週、インドの若い世代10人程度にもぶつけてみた、すると多くの答えは、

 「正直国境紛争とかどうでもいいから、早く仲直りして景気が良くなって私に良い就職先が見つかるようになってほしい」

 というものがほとんどだった。

 もちろん政治家は一部の中高年層からの支持を期待して「反中国」「中国製品ボイコット」を煽る人がいるのも事実だし、動画投稿されるような中国嫌いなインド人が一部いるのも事実だろう。しかし若者を中心に大多数のインド人はもっと実利的、いや合理的だ。

 国境紛争問題がヒートアップしていた7月上旬に、タイムズオブインディアに面白い社説が載ってあった。要約するとこうだ

 「インドと中国の経済的結びつきは非常に大きく、インドの輸入全体の15%以上を占めている。貿易から得ている恩恵は非常に大きい。確かに今回の事件は悲しいことだが、怒りに任せて中国との経済関係を閉ざすのは得策ではない。我々は中国と比べてまだまだ『弱い』し負けるのは我々だ。今はとにかく事を荒立てずに我慢して経済成長を重視する。中国以外の米国、豪州、そして日本との関係を強化して、将来中国と比肩する国になってから行動を起こすべき」

 正直非常に冷静で合理的で実利的な素晴らしい意見だと思ったし、私が日ごろ付き合いがあるインド人たちの「儲けさせてくれるうちはいい国」という合理主義と合致する部分があった。

 国際社会は単純な「好きか嫌いか」ではなく「得か損か」で動くものだということを再認識したし、我々海外で商売をする日本人ビジネスマンもこの点は見倣い心に常に留めておきたい。

  
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