インド経済を読む

2020年7月22日

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野瀬大樹 (のせ・ひろき)

公認会計士・税理士

大手監査法人にて、株式公開支援業務・法定監査業務・内部統制構築業務などに関わったのちに独立し、野瀬公認会計士事務所を設立。インドのニューデリーに、日本企業のインド進出を支援するNAC Nose India Pvt. Ltd.を設立し、代表に就任。日本インドの双方より、日系企業へのコンサルティング業務を行っている。近著に『お金儲けは「インド式」に学べ!』(ビジネス社)がある。

[著書]
インドで使用禁止となった中国製アプリ(REUTERS/AFLO)

 日本でも大きく報道されていたため知っている人も多いだろう。6月15日にインドと中国との国境において両軍の衝突が起こり、インド側に20名もの死者が出てしまった。インドと中国はもともと遠くない過去に国境をめぐり戦争をしていたため以前からも多少の小競り合いはあったのだが「死者」が出てしまったのは実に45年振りであり、両国間に緊張が走った。

 その結果、インドでは中国製品を窓から投げ落としたり、それらを踏みつけて火をつける過激な動画が動画投稿サイトにアップされたり、国会議員の中にも中国製品のボイコットを呼びかける者が出始めた。

 もともと今年3月より続きいまだに収まる気配が全くない「コロナ騒動」が中国の武漢発だったこともあり、中国に対するインドの国民感情の悪化に歯止めがかからない前提状況は存在していた。

 コロナ問題がインド国内で騒がれだした3月には町で韓国人が中国人と間違えられて暴行を受ける事件があった。

 さらにインド政府は4月には実質中国からのインドへの投資を制限する通達を出していた。これは「コロナで弱っているインド企業が、コロナ危機からいち早く抜け出した中国企業によって廉価で買収されることを防ぐため」と見られているが、今度は上記の6月の国境紛争を踏まえてインド政府は中国からの輸入品に関しての検査の厳格化を発表。実際にインドの港で中国製品が留め置かれる事例が頻発していた。

 そして6月29日、インド政府はとうとう「中国製のスマホアプリ、59個のインドでの使用禁止」を発表した。主要な中国系アプリ、TikTok、 SHAREIt、 UC Browser、 CamScanner、 Helo、 Weibo、WeChat、Club Factorなどはインドでも人気で、この発表にはインドの若い世代を中心に衝撃が走った。実際に私もスタッフが持っているTikTokを開いてみたが、本当にアクセスできなくっていた。

 インド政府はこの理由を、

 「AndroidとiOS上で利用可能なアプリについてのいくつかの悪用の事例の報告を受けていた」

 と発表、加えて

 「不正な方法でユーザーデータが、インド国外のサーバーに送信されている」

 とし、セキュリティ上の問題があるための措置であることを強調したが、これらのアプリは従来から使用されていたものであり、少なくともこの措置の「きっかけ」が今回の国境紛争によるものであることは明白だ。

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